夏の怖い話し特集 今日の昔話 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
     8月 2日の豆知識

366日への旅
きょうの記念日
パンツの日
きょうの誕生花
のこぎりそう
きょうの誕生日・出来事
1941年 ポール牧(僧侶)
  8月 2日の童話・昔話

福娘童話集
きょうの日本昔話
鬼の住むほら穴
きょうの世界昔話
サルとボウシ屋
きょうの日本民話
ウマをすくった鵜
きょうのイソップ童話
神さまの像を売る男
きょうの江戸小話
夕立屋
広告
 

福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 最後の水を飲む亡者

2008年 8月2日の新作昔話

最後の水を飲む亡者

最後の水を飲む亡者
富山県の民話富山県情報

 むかしむかし、あるけわしい山に、みんなから仙人とよばれるおじいさんがいました。
 おじいさんは山の上に小さな小屋をたてて、山へのぼってくる人たちの道案内をしてくらしていました。
 さて、ある夏の晩のこと、山の下から聞こえてくるおかしな声に、おじいさんはふと目をさましました。
(はて? こんな夜ふけに、何の声だろう)
 小屋の外に出てみると、なにかすすり泣くような声がひびいてきます。
 それも一人や二人でなく、大勢の人が一緒になって泣いているみたいに聞こえます。
(迷子かな? しかし、いまごろ山へのぼってくる人はいないはずだが)
 おじいさんは、声のする方をのぞいてみました。
 空は晴れているのに、深いきりがもくもくとわき出て何も見えません。
 大勢ですすり泣くような声はますます大きくなり、きりの中から風にのってのぼってきます。
 おじいさんはその場に、じっと立っていました。
 すると、にわかにきりが動きだして、空に月がのぼりました。
 そのとたんに、はるか下の方に青白い沼が浮かびあがりました。
「おや、あれは何だろう?」
 いつもと違う風景に、おじいさんは目を見張りました。
 白い着物を着た人らしいのが、沼のふちを動き回っています。
 おじいさんは急いで、山をおりていきました。
 沼の上まできて、下をのぞいてみるとどうでしょう。
 白い着物を着た何十人という人が、先をあらそって水を飲んでいるところでした。
 おじいさんは思わず、声をかけました。
「おーい、お前たち。そこで何をしているのだ?」
 すると、何人かがいっせいに顔をあげて、おじいさんの方を見ました。
 その顔はぼうぼうに髪の毛が伸びて、それをしばるようにして、ひたいに三角のずきんをつけていました。
 そしてどの目も、火のように光っています。
「も、もっ、亡者だあーーっ!」
 亡者というのは、悪い事をして亡くなった人たちの事で、これから地獄へ送られていくのです。
 おじいさんは目をつむると、しっかりと両手を合わせて一心に念仏をとなえました。
「なんまいだ、なんまいだ、なんまいだ、なんまいだ・・・」
 おじいさんのとなえる念仏が苦しいのか、亡者たちは苦しそうにうめき声を上げると、どこかへ逃げていきました。
 しばらくしてそっと目を開けてみると、亡者はどこにもいません。
「やれやれ。助かった」
 おじいさんはほっとして山の上へもどりながら、むかし、自分の父親に聞いた話を思い出しました。
「富山の立山(たてやま)にある地獄谷へ向かう亡者たちは、いつもここで最後の水を飲むのだ。亡者を見た者は近いうちに地獄へ引きづり込まれるから、気をつけろよ」
 父親の言った言葉通り、それからひと月もしないうちに、おじいさんは死んでしまったのです。

おしまい

ページを戻る

きょうの新作昔話メニュー
福娘童話集
きょうの新作昔話
福娘のサイト
366日への旅
毎日の記念日・誕生花 ・有名人の誕生日と性格判断
福娘童話集
世界と日本の童話と昔話
子どもの病気相談所
病気検索と対応方法、症状から検索するWEB問診
世界60秒巡り
国旗国歌や世界遺産など、世界の国々の豆知識