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2008年 4月11日の新作昔話
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米のめし
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて
むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
むかしは生活が貧しかったので、お米のめしなどは、あまり食べられません。
お祭りとか、お祝い事でもなければ、お米をたかなかったのです。
それほど米は、大切なものでした。
そしてなにより、おいしいものでした。
さて、きっちょむさんはこの頃、畑仕事も中休みでひまでした。
でも、何もしないでいても、お腹は空きます。
そしてどういうわけか、やたらとお米のめしが食べたくなりました。
そこできっちょむさんは、考えました。
「何かがなければ、かみさんはお米を出してくれないだろう。なんとかして米のめしを食う方法は、ねえかな? ・・・そうだ!」
次の朝早く起き出したきっちょむさんは、外へ出て空を見上げました。
どんよりした天気で、いまにも雨がふりそうです。
きっちょむさんは一人でうなずくと、急に大きな声をあげました。
「おお! そうかあ! わかったぞお!」
まるで、だれかに答えるような声でした。
「それは、大変だなあ! 橋をかけるのか! よし、いくぞお!」
それから、家の中のおかみさんにむかっていいました。
「おい、今日は代官さまのいいつけで、橋をかけにいかねばならぬ。きつい仕事じゃ。腹がへっては働けんから、米のめしたいて弁当つくってくれや」
むかしは畑仕事がひまになると、よく村の仕事にかりだされたものです。
そんなときに、そまつな弁当では恥をかくので、みんな見栄を張って、大切なお米を炊いたのです。
ようやく弁当が出来るころになって、きっちょむさんは、ふいに外へ出ていきました。
「なになに? また、呼んでるな」
実は、だれも呼んでいないのですが。
外に出ると、きっちょむさんの思った通り、ポツポツと雨が降ってきました。
きっちょむさんはニンマリ笑うと、小さな声で人の声をまねて、
「おーい、きっちょむさんよーぉ。雨がふってきたから、橋かけは、やめじゃあー」
それから、わざと大声で、
「そうか、わかったぞぉー!」
と、答えると、家の中にいるおかみさんにいいました。
「聞いたか? 今日の仕事はやめじゃ。仕方ねえ、たけた米のめしを食おうや」
そしてきっちょむさんは、おいしそうに、お米のめしをほおばりました。
おしまい
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