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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 大男の子どものおもちゃ ドイツの昔話 
      2008年 6月9日の新作昔話 
          
          
         
        大男の子どものおもちゃ 
  ドイツの昔話 → ドイツの情報 
       むかしむかし、山の中に、大男と女の子が住んでいました。 
         女の子といっても大男の子どもですから、それはそれは大きな体をしています。 
         ある日、女の子は山の下がどうなっているのかを見たくて、一人で山をおりていきました。 
         森のまわりには広々とした畑がつづき、お百姓さんが馬にすきを引っぱらせて畑をほりかえしていました。 
         女の子は珍しそうにお百姓さんと馬を見ていましたが、急にしゃがみこむと、大きな手で土ごとお百姓さんと馬をかきよせて、前かけの中へ入れました。 
         それから大喜びで山をかけのぼり、家へ帰りました。 
        「おや? 何を持ってきたんだね。そんなうれしそうな顔をして」 
         テーブルの前にすわっていた、お父さんの大男が言いました。 
        「うん。とっても珍しいおもちゃを見つけたの。こんなかわいいおもちゃは、はじめてよ」 
         女の子は前かけの中のものを、土ごとテーブルに出しました。 
         すると土の中から、すきをつけた馬とお百姓さんが出てきました。 
        「ねえ、かわいいでしょう。これ、本当に動くんだから」 
         女の子は小指の先で、お百姓さんの体を押しました。 
         お百姓さんはびっくりしてかけだしましたが、テーブルのはしまで来て立ちどまりました。 
         女の子はつづいて、馬にさわりました。 
         馬もびっくりして、すきをつけたままかけだしました。 
         お百姓さんは、あわてて馬のたずなをつかんで引きとめました。 
         それを見て、女の子は手をたたいて喜びました。 
        「お父さん見て。ほら、行きどまりになって、おどろいているわ」 
         するとお父さんが、こわい顔で言いました。 
        「これはおもちゃじゃない。人間というものだ。こうやって畑をたがやして、一生懸命働いているんだよ。人間が働かなかったら、わしらだってパンをつくることができなくなる。さあ、早くもとのところへ返しておいで」 
        「いやだ! いやだよ! こんなにおもしろいおもちゃを返すのはいやだよ!」 
         女の子は、大声で泣きました。 
         でも、お父さんは許してくれません。 
        「そんなわがままを言うなら、パンを食べさせないぞ」 
         そこまで言われては、女の子もがまんするよりしかたがありません。 
         がっかりして、テーブルの上のお百姓さんと馬をつまんで、前かけの中へほうりこみました。 
        「だめだめ、そんな乱暴な事をしては」 
         お父さんが、その手をおさえました。 
        「いいかね。そっと運んで、もとのところへおいてくるのだよ」 
         女の子は山をくだると、もとの畑へお百姓さんと馬をおき、そのまま山の上へ走っていきました。 
        「やれやれ、助かった」 
         お百姓さんと馬は、ほっとして女の子を見送りました。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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