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2010年 4月26日の新作昔話
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うめの実
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて
むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
きっちょむさんが時々町へ何かを売りに行く途中の村に、三太郎という、とてもわんぱく小僧がいました。
この三太郎にだけは、さすがのきっちょむさんのとんちも効き目がなく、いつもきっちょむさんにちょっかいを出してきます。
今日もきっちょむさんが町に行っての帰り道、この村にさしかかると、三太郎が梅の木の上に隠れていて、きっちょむさんの頭に梅の実をぶつけてきました。
いつもだったら、きっちょむさんが叱りつけ、そして三太郎が逃げて行くの繰り返しですが、今日のきっちょむさんはいつもとは違い、梅の実を投げつけた三太郎を見上げて、にっこり笑うと、
「や、三太郎か、これはどうもありがとう。おかげで、明日は良いことがあるだろう。さあ、これお礼だよ」
と、財布から三文を取り出して、梅の木の根元に置いたのです。
すると三太郎は、不思議そうな顔で、木の上から言いました。
「やい、きっちょむさん! 何だって、お金をくれるんだ!」
「おや? お前、知らないでやったのか? 今、お前がぶつけたのは梅の実だろう。だから、これは、『ウメエ事にぶつかる』という前ぶれで、とても縁起がいいんだよ。こんな事をされたら、誰だって喜んで、お金をくれるにちがいないさ」
きっちょむさんがまことしやかに言ったので、三太郎はすっかり信じてしまいました。
さて、その次の日の事。
きっちょむさんがまた町へ行こうと、この村にさしかかると、道ばたで三太郎が遊んでいました。
「おい、三太郎」
きっちょむさんが声をかけると、三太郎は、どんどん逃げていきます。
そして、遠くから言いました。
「おい、きっちょむさん! 昨日は、お前のおかげでひどい目にあったんだぞ」
「ほう、どうしたんだい?」
「お前が言ったすぐあとで、お侍さんが通りかかったので、お金をもらおうと、梅の実をぶつけたんだ。すると、お侍さんが『手打ちにする!』と言って、怒ったんだよ」
「はっはっはっ。それは大変だったな。でもそれで、ちっとはこりただろう?」
「ああ、そのお侍さんは、悪者をしばるお役人で、またこんないたずらをしたら、次は牢屋に入れると言っていた。だから、もう悪さはよしたよ」
「そうか、それは感心感心。今日はほうびに、町から菓子を買ってきてやるぞ」
きっちょむさんがこう言うと、三太郎は首を大きく横に振って、
「いらない。いらない。お前から物をもらうと、また、ひどい目にあうからな」
と、逃げてしまいました。
おしまい
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