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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > ヨモギとショウブ
2014年 3月12日の新作昔話
ヨモギとショウブ
端午の節句の昔話
むかしむかし、ある若い猟師が狩りに行くと、突然鬼が襲いかかって来ました。
「うまそうな人間だ。かくごしろよ」
猟師はすぐに鉄砲を構えると、
ズドーン!
ズドーン!
と、鉄砲の玉を鬼に撃ち込んだのですが、鬼は撃たれても平気な顔をしています。
「わっははははは。そんな物が、このおれさまに通用するものか」
猟師は鉄砲を放り投げると、一目散に逃げ出しました。
「待てー! 逃がさぬぞー!」
鬼は猟師を追いかけましたが、猟師があわててヨモギの原っぱに逃げ込むと、鬼はそれを見て立ち止まりました。
「火じゃ、火が燃えておるぞ!」
ヨモギの葉っぱが炎の形に似ていたので、鬼は勘違いをしたのです。
何とか助かった猟師ですが、しかしいつまでもここに隠れているわけにはいきません。
猟師はヨモギの原っぱから抜け出すと、そのまま一目散に逃げ出しましたが、でもすぐに見つかってしまい、鬼が再び追いかけて来ました。
「待てー! おとなしく食われろー!」
そして鬼に捕まれそうになった時、猟師は菖蒲(しょうぶ)の茂みに飛び込んだのです。
すると鬼は、またも立ち止まって、
「剣じゃ! 地面から剣が生えているぞ! しかし、あいつはなぜ平気なんじゃ?!」
と、菖蒲の茂みに近づいては来ませんでした。
菖蒲の葉っぱが剣の形に似ていたので、鬼は勘違いをしたのです。
そこで猟師が菖蒲の葉を持って茂みの外へ出て来ると、鬼は、
「剣が、剣が歩いてくるー!」
と、震えながら逃げて行きました。
その日がちょうど五月五日だったので、今でも五月五日の端午(たんご)の節句(せっく)には、魔除けとしてヨモギと菖蒲を軒先に吊す様になったのです。
おしまい
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