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 3月4日の日本の昔話
 
  
 生あるものは
 生个東西係麼个
 
 福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
 むかしむかし、ある寺に、和尚(おしょう)さんと小僧が住んでいました。頭擺頭擺,有一間寺廟,和尚摎細沙彌戴在該。
 この寺の和尚さんは、柿が大好きです。
 這廟寺个和尚非常好食柿仔。
 そこで秋になると、和尚さんは寺の柿の実を全部一人で食べてしまうのでした。
 所以秋天个時節,廟寺个柿仔全部分佢自家一儕人食淨淨。
 
 さて、秋も終りに近いある日の事。
 秋尾冬初个一日,
 一人で寺の留守番をしていた小僧は、柿の木に真っ赤な柿の実が二つだけぶら下がっているのを見つけました。
 細沙彌一儕人留在寺廟,看著柿樹頂吊等二个紅冬冬个柿仔。  「ああ、何とうまそうな柿の実だろう。・・・せめて一つだけでも、食べてみたいな」
 「啊!柿仔還好食樣哦!...至少有一个來食看乜好哪!」
 そんな事を考えた小僧は、とうとう我慢出来ずに木に登り、柿の実を一つ食べてしまいました。
 沙彌想著這、漸漸當毋著,就蹶上樹頂,摘一隻柿仔來食。
 「うあ、甘くてうまい!」
 「哇,恁甜,當好食!」
 あまりのおいしさに、小僧は二つとも食べてしまいました。
 因為當好食,細沙彌兩隻都摘來食淨淨。
 ところが、ふと我に返った小僧は大あわてです。
 毋過,等佢返魂轉來,佢續毋知仰結煞好。  「しまった! このままでは和尚さんに叱られる!」
 「壞忒咧!恁樣形定著會分和尚駡!」
 小僧は何とかして、和尚さんに怒らせない方法はないかと考えました。
 細沙彌無論仰般,一定愛想出毋會分和尚發閼个方法正做得。
 そしてあれこれ考えながら寺の中を歩いていたので、うっかりと和尚さんが大事にしていた茶碗を蹴って割ってしまいました。
 所以,東想西想緊想緊在廟寺肚行來行去,一下無注意,挨著和尚盡重要个碗,,嗄打爛忒。  「大変だ!柿ならまだしも大切な茶碗まで!このままでは和尚さんに殺されてしまう!・・・うん?・・・殺される。・・・壊れる。・・・・・・そうだ!」
 「死無命咧!柿仔還較爭哦,恁重要个碗仰結煞!定著會分和尚㓾忒!...嗯?...分佢㓾忒。...舞壞忒。...恁仰!」
 
 さて、夕方になると和尚さんが帰って来ました。
 臨暗仔和尚轉到來了, 
 小僧は和尚さんを出迎えると、和尚さんに尋ねました。
 細沙彌行出去迎接和尚个時節,問和尚:
 「和尚さま。実は和尚さまの留守中に、旅のお坊さまが来られまして、私に問答(もんどう→知識をきそい合う修行)をされました。
 「和尚師父。你無在屋下个時節雲遊和尚有來過,摎佢辯論過咧,  お坊さまに、 『生あるものは・・・』と、聞かれましたが、私には答える事が出来ませんでした」
 佢問『生个東西係...』𠊎毋會回答。」  それを聞いた和尚さんは、ニッコリ笑って言いました。
 和尚聽了後笑笑應講:  「そうか、そうか、今度その様に問われる事があれば、
 『必ず滅(めっ)す』と、答えるのじゃ。
 「恁樣形哦?下二擺有人問著這事情你斯回答『一定會死忒』。
 生あるものは、必ず滅す。そして形がある物は、必ず壊れるもの。
 それは、仕方のない事じゃ」
 有生就有死,所以有形體个東西定著會壞忒,該係無法度个事情!」  「仕方のない事で、ございますか?」
 「無法度个事情,係無?」
 「そうじゃ。世の中には、それが分からぬ未熟者が大勢おるがな」
 「該就係世上毋了解這道理个人怕當多敢?」
 和尚さんがそう言ったとたん、小僧は割れた茶碗を目の前に差し出しました。
 和尚師父在該講个時節,細沙彌就拿出爛忒个碗來。  「和尚さま、お許し下さい。和尚さまの好物の柿を食べた上、大切な茶碗を割ってしまいました」
 「和尚師父,請原諒。你最好食个柿仔分𠊎食忒,另外又摎恁重要个碗打忒。」  「なんと・・・」
 「仰會...」
 和尚さんも怒るに怒れず、苦笑いをして小僧を許してやりました。
 和尚當閼又做毋得發脾氣,斯好苦笑並原諒細沙彌。    おしまい 煞咧
  
 
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