福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 8月の日本昔話 >涼み袋
8月2日の日本の昔話
涼み袋
清涼袋
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、一人の侍がお供を連れて、山道を歩いていました。
頭擺頭擺,一個武士摎佢个共伴共下順等山路行。
とても暑い日だったので、侍もお供も全身汗だくです。
因為該日當熱,所以武士摎佢个共伴都行到汗流脈落。
「暑いな」
「還熱哪!」
「はい、まったくです」
「係呦,確實熱。」
しばらく行くと、峠に一軒の店がありました。
過一站仔,看著山崠頂有一坎店仔。
その店の看板には、
在店仔个招牌頂
《涼み袋あり》
と、書いています。
寫等︰《有清涼袋》
ほほう。涼み袋とは、いかなる物であろうか?」
「hohou,麼个係清涼袋?」
「さあ?とりあえず、寄ってみましょうか」
「唉哦?無法度,還係行過去看係麼个東西?」
二人が店に入って行くと、小ざっぱりした身なりのおじいさんがニコニコしながら出迎えました。
兩儕行落店仔後,一個著著盡亮線个老阿伯微笑咪咪出來迎接佢。
「いらっしゃいませ。お暑い中、大変でしたでしょう」
「歡迎光臨。恁熱个天還難佇哦。」
お茶を差し出すおじいさんに、侍が尋ねました。
老阿伯奉茶後,武士就問講:
「これ、表の看板に《涼み袋あり》とあるが、その涼み袋とは、いかなる物だ?」
「噯,頭前招牌頂寫等︰《有清涼袋》到底麼个係清涼袋?」
「はい、涼み袋とは冬場に山の冷たい風を詰め込んだ、不思議な袋でございます」
「哦,清涼袋係張等冷天時節山頂冷風个神奇袋仔。」
「ほほう。よくわからぬが、二袋ばかりもらおう」
「Hohou。無盡了解,毋過拿兩隻來。」
「はい、ありがとうございます」
「好,承蒙。」
侍はおじいさんから紙袋を受け取ると、それをお供に持たせてふもとの宿に行きました。
武士在老阿伯該接著紙袋時節,佢交分共伴帶轉山排个旅社。
その日は、夜になっても暑い日でした。
該日雖然到暗晡頭也還係當熱。
寝苦しさに目を覚ました侍は、お供を呼んで言いました。
睡毋落覺个武士,喊醒共伴,講:
「峠の店で買った《涼み袋》というやつ、国の土産に持って帰ろうと思っていたが、こうも暑くてはがまん出来ぬ。すまんが、一袋持って来てくれんか」
「山崠頂該坎店仔買个清涼袋,本來想帶轉去做等路,但係實在昶熱,當毋著,失禮拿一隻過來。」
「はい。ただいま」
「好,黏時拿來。」
お供が涼み袋を一袋持って来たので、侍はその袋の口を開けてみました。
共伴拿一隻清涼袋過來,武士打開袋仔嘴試看。
すると袋の中から、とてもひんやりとした涼しい風が吹き出して来て、あっという間に部屋中を涼しくしてくれたのです。
過後,一陣涼爽个風對袋仔裡肚吹出來,一下仔房間變涼了。
「おおっ、これは良い物を買った」
「唉哦,買到這恁好个東西。」
涼み袋のおかげで、侍はぐっすり眠る事が出来ました。
打幫這清涼袋,武士正睡得落覺。
さて、こちらはお供の部屋ですが、この部屋は風通しが悪くて侍の部屋以上に寝苦しい部屋でした。
毋過,這位係共伴房間,這隻房間通風毋好,比武士房間還較毋好睡。
お供はだらだらと汗をかきながら、一睡も出来ません。
共伴歸身汗根本睡毋忒。
「うーん、こうも暑くては、寝るどころではないぞ。
「m11,像這恁熱,根本睡毋落覺。
明日も朝早くから、長く歩かなくてはならんのに。
韶朝晨打早又愛行恁遠个路。
・・・よし、おらも一つ、涼み袋を使ってみようか。
...好,俚乜拿一隻清涼袋來用看。
少しだけなら、ばれないだろう」
若係用一息仔,無人會知敢。
こうしてお供は、残った涼み袋を少しだけ開けてみました。
共伴斯摎伸个清涼袋打開來小可用一息仔。
するとたちまち涼しい風が吹き出して、お供の汗がすーっと引いていきます。
過後黏時一陣涼風吹過來,汗水盡遽也燥忒。
「これは気持ちがいい。よし、もう少しだけ」
「感覺還好,好,再過多一息仔。」
こうしてお供は何度も何度も涼み袋を開けて、とうとう涼み袋の風を全部使ってしまったのです。
就恁樣,共伴一到過一到打開清涼袋,包尾清涼袋个風全部用淨淨。
「さあ、困ったぞ。旦那さまがお目覚めになったら、きっともう一袋持って来いと言うに違いない。どうしよう、どうしよう」
「這下,仰結煞,等下主人醒,一定會喊再過拿一袋來,仰結煞,仰結煞。」
しばらく考えていたお供は名案を思いついたのか、空になった涼み袋にお尻を当てると、
考慮一段時間後,共伴想出一隻好計謀樣,
♪ブーーーーーッ
と、袋の中におならを入れて、素早く袋の口を閉じました。
♪ bu....
打兜屁落空个清涼袋肚,煞煞摎袋仔嘴䌈起來。
これで見た目には、まだ使っていないのと同じです。
看起來摎無使用過共樣。
さて、涼み袋の効果がなくなって来たのか、侍は蒸し暑さで目を覚ましました。
清涼袋个效果無忒敢?武士熱到醒了。
「うむ。どうやら、涼み袋の効き目がなくなったようだな。よし、もう一つ使うとするか」
「m11。清涼袋像形無效樣,再過拿一隻來好無?」
侍は、お供に新しい涼み袋を持って来させると、涼しい風を楽しみに紙袋の口を開けました。
武士喊共伴拿一個新个清涼袋來後,為著愛享受涼風就打開紙袋。
すると涼み袋からは涼しい風ではなく、ぷーんと臭い風が吹いてきたのです。
過後,對袋仔裡肚吹出來毋係涼風,係臭風ba bu个風吹過來。
「げほっ、げほっ。・・・な、なんだ、この風は!」
「gehoo,gehoo 。....麼、.麼个,這風!」
侍が臭いにおいにむせていると、お供が涼しい顔で言いました。
武士分臭屁挶著時節,共伴像無事人樣,講:
「この暑さですからね。さすがの風も、腐ってしまったのでしょう」
「像這恁熱个天,連風乜會臭餿忒。」
「なるほど。こんな事なら、早く使っておればよかった」
「了解。在這種時節,應該早兜用。」
おしまい
煞咧
おしまい
|