福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話 >果報者(かほうもの)と阿呆者(あほうもの)
10月24日の日本の昔話
果報者(かほうもの)と阿呆者(あほうもの)
有福報个人摎戇當个人
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、長門の国(ながとのくに→山口県)の北浦のある里に、とても貧しい夫婦が住んでいました。
頭擺頭擺,有一個安到長門(山口縣)个國家。國內有一隻安到北浦个位所。有一對非常苦个兩公婆戴在該。
二人はわずかな田んぼをたがやし、山から拾ってきた薪(たきぎ)を売って、ようやくその日の暮らしをたてていました。
兩儕斯耕一息仔田,去山頂撿兜樵來賣,靠這辛苦錢過日仔。
ある日の事、だんなが女房にこんな事を言いました。
有一日,老公摎餔娘講:
「毎日毎日、汗水流して働いているのに、わしらの暮らしは少しも良くならんな。わしは、もう働くのにあきてしもうた」
「逐日、逐日,做事做到汗流脈落,𠊎俚个生活一滴又無變好,𠊎毋想過做了。」
すると女房が、こう言いました。
厥餔娘應講:
「確かに、そうですね。
「確實,係恁樣呢。
そう言えばこの間、大寧寺(だいねいじ)の和尚さんが説教で『果報は寝て待て』と言っていましたよ。
前回大寧寺和尚開示講:『有福報毋使恁無閒』哊。
あわてずに寝て待っていれば、良い事は向こうからやって来るんだそうです。
安心睡等,聽講好事自然會降臨。
あなたもひとつ、果報を寝て待ってはどうですか?」
你乜來睡等愛無?」
「なるほど、寝て待てばいいのか。そいつは楽だ」
「有影,睡等斯做得係無?該斯好哪。」
そこでだんなは、その次の日から寝てばかりいました。
所以,老公第二日開始睡等毋䟘。
しかし果報は、いつまでたってもやって来ません。
福報無論等幾久都無來。
そんなある満月の夜、寝ながら果報を待っていただんなが大声で叫びました。
有一隻滿月个晚晡,緊睡緊等福報來到个老公,大聲噦。
「おい、こっちへ来てみろ。ほれほれ、この天井窓から、お月さんのウサギが餅をついとるのがよく見えるぞ」
「噯,過來這片析看,對天窗看出去,月光頂个兔仔舂粢粑看到清清楚楚。」
「あら、ほんとうね」
「唉哦,正經呢!」
確かに、天井窓からお月さんのウサギがはっきりと見えました。
有影,對天窗看出去,月光頂个兔仔看到清清楚楚。
さて、この話がたちまち村中に広がり、月夜の晩には大勢の村人たちが夫婦の家へ集まって来て、天井窓から月をのぞくようになりました。
這話漸漸在莊肚流傳,滿月該晚晡當多村民走到兩公婆屋下,去對天窗看月光頂个兔仔。
それがやがて、
無幾久,
「あの家の天井窓からウサギの餅つきを拝んだ者には、果報が来るそうだ」
と、言ううわさなって、だんだん遠くからも人が集まって来るようになりました。
「在該座屋个天窗拜月光頂个兔仔舂粢粑个人,聽講斯會有福報。」
个傳言流傳開來,漸漸較遠个人乜擠過來。
そしてお月さんを見に来た人々がお礼のお金やお供物を置いて行くので、夫婦はたちまち大金持ちになったのです。
因為來拜月光个人帶來个錢、供品,走个時節全部都留下來,兩公婆漸漸發起來,斯變有錢人。
ついに、果報がやってきたのです。
包尾,福報總算來了。
喜んだ二人は、ぼろ家をこわして立派な家を建てると、もっとお金がもうかるようにと、十も二十も天井窓を取付けました。
歡喜壢天个兩公婆摎爛屋拆忒,起過派頭个新屋後,為著想愛賺加兜錢,新屋加裝十過二十隻天窗。
しかしどうしたわけか、新しい天井窓からはいくらお月さんをのぞいても、ちっともウサギの餅つきが見えないのです。
毋過,毋知仰般對新个天窗看出去斯有月光,看毋著兔仔舂粢粑。
やがて夫婦の家には、誰も来なくなりました。
無幾久,兩公婆屋下嗄無半儕愛來了。
それどころか雨が降ると天井窓から雨もりがして、雨水で家が腐り始めたのです。
毋只恁樣,落水个時節對新个天窗會漏水落來,屋就開始歿。
困った二人は、大寧寺の和尚さんのところへ相談に行きました。
無結無煞个兩公婆斯去大寧寺問和尚。
すると和尚さんは、大声で笑いながら、
和尚哈哈大笑講:
「あはははははは。人間は欲を起こすと、果報者も阿呆者になるという事じゃ」
と、言ったそうです。
「啊哈哈哈哈,你無聽人講,人若係貪心,有福報个人也會變戇當个人。」
おしまい
煞咧
|