福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話 > 仁王とどっこい
11月15日の日本の昔話
仁王とどっこい
仁王摎琢開(dokkoi)
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、仁王(におう)という大変な力持ちがいました。
頭擺頭擺,有一個安到仁王(金剛力士),非常大力。
もう日本では、仁王にかなう者はいません。
在日本無人比得贏仁王。
「唐の国(からのくに→中国)に、どっこいという力持ちがいると聞いたが、どーれ、出かけて行って、すもうでもとってくるか」
「聽講唐國(中國唐朝) 有一個安到琢開(dokkoiどっこい)个大力士,噯,來去摎佢比揇腰交。」
仁王は舟に乗って唐の国に行くと、どっこいの家に行きました。
仁王坐船仔去唐國,琢開(dokkoi)个屋下。
「どっこいは、いるかな?日本一の仁王さまが、力比ベに来たぞ」
「琢開(dokkoi)有在無?日本最大力个仁王,來尋你比大力了。」
すると家の中から、おばあさんが出てきました。
過後,屋肚出來一個老阿婆。
「ああ、どっこいは、じきに帰って来るよ。少し、待ってください」
「啊,琢開(dokkoi)黏時轉來,等一下。」
おばあさんはそう言って、せっせとお昼ご飯のしたくを始めました。
老阿婆講煞後,斯去煞猛開始煮晝。
仁王が見ていると、おふろよりも大きなカマがあって、そこにお米を何俵も入れています。
仁王發現,一隻比洗身桶較大个鑊仔,放了幾下袋米落去。
仁王は思わず、おばあさんにたずねました。
仁王斯去問老阿婆。
「そんなにいっぱいご飯をたいて、祭りでもあるのか?」
「煮恁多飯,有麼个祭典係無?」
「いんや、これはおらとじいさまと、あとはおらの子どものどっこいの三人で食べるよ」
「毋係,這係摎老阿公,還有吾倈仔三儕愛食个。」
「これを、三人で・・・」
「這兜,三儕愛‧‧‧」
仁王も大食いで有名ですが、これにはとてもかないません。
仁王乜當會食有名,毋過也無像這種程度。
「あの、ちょっくら、お便所を貸してくれや」
「噯,便所借用一下。」
仁王は体がブルブルふるえてくるのをガマンして便所に入ると、そこの窓から逃げ出しました。
仁王忍等激激顫个膴身行落便所後,對窗門瀉走。
「どっこいというのは、きっと化け物に違いない。これは、逃げるが勝ちだ」
「琢開(dokkoi)定著係怪物,這下來去走較贏。」
やがて浜辺に着いた仁王は舟に乗ると、大急ぎでこぎ出しました。
一下仔瀉到海脣个仁王,坐上船,緊觸觸撐等走。
さて、間もなく家に帰ったどっこいは、戸口に大きな足あとがあるのを見つけました。
過無幾久,轉到屋个琢開(dokkoi)看著門口留下來个大腳跡。
「でっかい足あとだな。こんな足をしているのは、日本の国の仁王しかいねえぞ。さては、力比べに来たな。おっかあ、仁王はどこにいるだ?」
「還大个腳跡哪,這恁大个腳跡除忒日本仁王無別儕。會係來比大力無?阿姆,仁王在哪位?」
どっこいが聞くと、おばあさんが言いました。
琢開(dokkoi)問後厥姆應講︰
「あんれ、なんて長いお便所だベ」
「該個人,仰會去便所恁久。」
そこで便所をのぞいて見ると、中は空っぽです。
所以走去便所尋,裡肚空空。
「さては、逃げたな。ここまで来て、おらと勝負をしないで帰るなんて、うわさほどでもない弱虫だ。よーし、ひっとらえてやっつけてやる」
「原來係偷瀉走哪。恁遠走過來,無比斯轉去,毋像傳言講个,係一隻殗雞仔。」
どっこいは長いくさりのついた大きなイカリをかついで、仁王の足あとを追いかけました。
琢開(dokkoi)擎等帶一條長長个鍊仔个錨,順等仁王个腳跡去追。
「おーい、待てえ!」
「噯,等一下!」
どっこいが浜辺に着くと、仁王はもう舟をこぎ出して遠くにいます。
琢開(dokkoi)追到海脣時節,仁王早就摎船仔撐當遠去了。
「逃がさないぞ!」
「毋會分你瀉走!」
どっこいは仁王の舟に向かって、くさりのついたイカリを投げつけました。
琢開(dokkoi)摎帶一條長長个鍊仔个錨擲向仁王該片去。
「えいやっ!」
「eiya!」
イカリはピューンと空を飛び、仁王の舟に突きささりました。
錨piu聲飛過天頂,刺著仁王个船仔。
仁王はひっしで舟をこぎますが、どっこいが怪力でくさりをどんどん引っ張ります。
仁王拚命撐該船仔,琢開(dokkoi)用神奇个力拉錨鍊仔。
「このままでは、舟が引き戻されてしまう!」
「照恁樣。會分佢拉倒轉去!」
その時、仁王は日本を出る時に、武家の神さまである八幡(やはた)さまにもらったヤスリの事を思い出しました。
仁王想著該當時,離開日本時節,武士守護神八幡神送个鋸砣。
このヤスリは、どんな鉄でも切れるヤスリです。
這鋸砣麼个鐵都鋸得斷。
「八幡さま、お守りください」
「八幡神,請保佑𠊎。」
仁王がヤスリでくさりをこすると、くさりはプッツリと切れました。
仁王用鋸砣挼鍊仔,鍊仔bud聲斯斷忒。
とたんに力一杯くさりを引っ張っていたどっこいは、ズデーンと海の中に尻もちをつきました。
該下出力拉等鍊仔个琢開(dokkoi),砰聲打扽坐。
どっこいは、切れたくさりを見ておどろきました。
琢開(dokkoi)看著斷忒个鍊仔嗄發痴驚。
「仁王とは、何という怪力だ。おらでも、このくさりは切れないのに。・・・勝負しなくてよかった」
「仁王恁大力,𠊎兜乜無法度舞斷鍊仔,・・・好得無比。」
それからです。
因為恁樣,
重い物を持つ時に、唐の国では『におう』とかけ声をかけ、日本では『どっこいしょ』と言うようになったのは。
搬重个東西該下,唐國會喊『nioh』,日本會喊『dokkoishyo』
おしまい
煞咧
|