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          福娘童話集 > きょうの百物語 > 4月の百物語 > 壁の中から 
         
        4月1日の百物語 
          
          
         
壁の中から
 
     
    にほんご(日语)  ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文 
     
    ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
    
     
    投稿者 「櫻井園子」  櫻井園子エス代表 《櫻井園子キャンドルWEB販売》 
     
    ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
    
     
    投稿者 ふわふわスリープ 
      
      
      
       むかしむかし、あるところに、仲の良いおじいさんとおばあさんがいました。 
 二人は、ある晩、 
「なあ、ばあさんや。 
 どちらかが先に死んだら、お墓には入れないで家の壁に塗り込めよう。 
 そうすれば、いつまでも一緒にいられる」 
「そうですね。そして死んだ者が壁の中から呼んだら、必ず返事をする事にしましょう」 
と、約束しました。 
 ところが間もなく、おばあさんがポックリあの世へ行ってしまったので、おじいさんは約束通り、おばあさんの亡きがらを壁に塗り込めたのです。 
 
 すると、その日から毎日、 
「おじいさん、いるかい?」 
 壁の中のおばあさんが聞いてきます。 
「ああ、ここにいるよ」 
「何をしているんだい?」 
「わら仕事だよ」 
 
 またしばらくすると、おばあさんが聞きます。 
「おじいさん、いるかい? 何をしているんだい?」 
 一日に何度も聞かれるので、おじいさんはだんだん面倒くさくなってきました。 
「誰か、わしに代わって返事をしてくれる者はおらんかなあ?」 
 おじいさんがため息をついていると、うまい具合に旅の男がやって来ました。 
「すみません。旅の者です。よければ一晩、泊めていただけませんか?」 
 それを聞いたおじいさんは、大喜びで言いました。 
「どうぞ、どうぞ。 
 遠慮なく、泊まっていってくれ。 
 その代わり壁の中から、『おじいさん、いるかい?』と、声がしたら、『ああ、ここにいるよ』と、答えてくれんか。 
『何をしているんだい?』と、聞かれたら、適当に答えてくれりゃあいい」 
「はい。そんな事なら、おやすいご用ですよ」 
 旅の男が引き受けてくれたので、おじいさんはやれやれと、お酒を飲みに出かけました。 
 
 留守を頼まれた男は、壁の中のおばあさんの声に、いちいち答えていましたが、何度となく聞かれるので、やがて面倒になってつい、 
「うるせえなあ。おじいさんは、酒を飲みに出かけたよ」 
と、本当の事を言ってしまったのです。 
 すると突然、 
 ガバッ!  
と、壁が破れて、半分がガイコツの、ものすごい顔のおばあさんの幽霊が飛び出してきました。 
「おじいさんは、どこだーー! お前は誰だーー!」 
「うひゃあー! でっ、出たーー!」 
 男は驚いたのなんの、命からがら逃げて行きました。 
      おしまい 
          
 
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