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第 50話
ダイコンおろしストーン
鳥取県の民話 → 鳥取県情報
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むかしむかし、お百姓(ひゃくしょう)たちが年貢(ねんぐ)のお米をおさめないので、お代官(だいかん→役人)が、きつく取り立ててやろうと、山の村へやってきました。
それを知った山の村では大さわぎで、ウマにのったお代官がやってくると、ごちそうにと、大きな皿(さら)にタイを一匹のせて出しました。
「よしよし、よい心がけじゃ。年貢の取り立ては、まずこれを食ってからにしてやろう」
と、お代官が出されたタイを食べようとしたら、なんとそのタイはくさっていて、ウジ虫がわいているのです。
「この無礼者(ぶれいもの)! なんと言う物を出すのだ!」
お代官が顔をまっ赤にして怒ったので、村のお百姓が言いました。
「へえ、なんでも、えらいお方が来られたときは、タイをつくって(→この場合のつくるとは、本当はおさしみにすること)さしあげるもんじゃと聞きましたで、わしらはタイを畑にうめて、こやしをかけてつくりました」
これには、お代官もあきれてしまいました。
「まあ、こんな山の中にいては、海の魚の食べ方など知らぬのも無理はない。だが、山ならダイコンぐらいあるじゃろう、ダイコンおろしにして食うから、もってまいれ」
「へえ、へえ」
お百姓たちは、いったん帰りましたが、何をしているのか、なかなかダイコンを持ってきません。
でもそのうちに家の天井裏で、何やらガサゴソと音がし始めました。
「あいつら、天井裏にのぼって、何をしているのじゃ?」
お代官が天井を見上げていると、お百姓の一人が天井の板を一枚はがして言いました。
「お代官さま、今からダイコンおろしいを出します」
そして、天井から大きなダイコンを投げ落としたのです。
「わっ、何をしておる!」
ビックリするお代官の目の前に、お百姓はまた、ダイコンを投げ落としました。
「へい、ダイコンおろしいです」
そしてまた、ストーンとダイコンを天井から投げ落とします。
「こら、あほうども、やめい。もうダイコンおろしはいらん!」
お代官がいくらどなっても、お百姓たちは、天井からダイコンを投げ落としました。
「だっ、だめじゃ。話してわかるような相手じゃない。いや、こんな村にグズグズしていたら、何をされるかわからん」
お代官は年貢の取り調べもせずに、急いで逃げ帰ったという事です。
おしまい
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