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第 138話
寝屋川の三毛猫
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朗読者 : ぬけさくのいちねん草紙 |
むかしむかし、河内の国(かわちのくに→大阪府東部)の寝屋川の里に、おしんばあさんというおばあさんがいました。
おしんばあさんは三毛猫を飼っていますが、この辺りでは猫を三年で捨てる決まりになっていました。
なぜなら猫は三年以上飼うと尻尾の先が割れて、猫又と呼ばれる化け猫になるからと言われているからです。
ただ、同じ猫を三年以上飼う場合は、三年目に一度猫を捨てて、そしてすぐに猫を拾えば良いそうです。
おしんばあさんも初めの三年目と次の三年目は決まりに従って猫を捨ててからすぐに拾っていましたが、たとえ真似事でも猫を捨てるのは可愛そうだと思い、三回目の三年目は猫を捨てませんでした。
その日の夜、おしんばあさんが三毛猫に言いました。
「ミケや、今日でお前が家に来て九年目だよ。お祝いに、お前の大好きな赤飯を炊いてあるからね。たくさん食べるといいよ」
「ニャーー」
三毛猫のミケは、おしんばあさんが用意してくれた赤飯をおいしそうに食べました。
その真夜中のこと、ミケは黙って家を出て行ったのです。
それに気づいたおしんばあさんは、毎日ミケを探してまわりました。
「ミケや! ミケ、どこへ行ったんじゃ!」
しかしミケは、どこにもいませんでした。
それから何年かが過ぎたある日、おしんばあさんは大阪の町へ用事で出掛ける事になりました。
ところが道を間違えて、いつの間にか生駒(いこま)の山奥へと入ってしまったのです。
「どこかに、小屋でもないだろうか?」
おしんばあさんがあたりを見回すと、運の良い事に家の灯が見えました。
「やれやれ、助かった。今夜はあそこで泊めてもらいましょう」
その家はとても立派なお屋敷で、おしんおばあさんが事情を話すと、中にいたきれいな女の人が優しくいました。
「それはそれは、大変でしたね。こんな所でよかったら、さあどうぞ」
きれいな女の人は、おしんばあさんを立派な部屋へと案内しました。
「まあまあ、なんて立派な部屋でしょう」
おしんおばあさんは喜びましたが、ふと部屋のすみを見ると、よく掃除された部屋なのに動物の毛が何本も落ちていました。
猫好きのおしんおばあさんは、それが猫の毛だとわかりました。
(この家には猫を飼っている様子はないのに、どうして猫の毛が?)
おばあさんが不思議に思っていると、さっきの女の人が再びやってきて、おしんおばあさんに言いました。
「お風呂が沸きましたので、どうぞお入り下さい」
「まあまあ、それはご親切に」
お風呂の支度をしたおしんおばあさんが、お風呂へつながる廊下を歩いていると、廊下ですれ違った女中さんが、おしんばあさんの顔を見ながらびっくりした様子で言いました。
「これはなつかしい。おしんおばあさんではありませんか」
「はあ? 失礼ですが、どこかでお会いになりましたか?」
「お忘れですか? わたしは、おばあさんの家で飼われていた三毛猫のミケでございます」
「えっ、ミケ!?」
驚いて大きな声を出すおしんおばあさんの口を、女中さんはあわててふさぎました。
「しーっ。
おばあさん、この家は化け猫の家で、山に迷った人を泊めては食べてしまうのです。
わたしもおばあさんに三年以上飼われたので、化け猫になってここに来ているのです。
さあ、早くお逃げください。
このままふもとまで下りると、人間の宿があります。
途中までは、わたしが案内しますから」
おしんおばあさんはミケに案内されて、無事に人間の宿へとたどり着いたのでした。
おしまい
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