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1月12日の日本の昔話
  
  
  
  おばあさんのおおてがら
 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
   年が年なので、おばあさんは、もうだいぶ耳がとおくなっていました。
   ふたりは、つつましくくらしていましたから、だんだんに、お金がたまってきました。
   おじいさんは、まいばんねるまえに、ためたお金をかぞえるのが、たのしみでなりません。
   あるばん、おじいさんがお金を、チャリーン、チャリーンと、かぞえていると、どろぼうがふしあなからこれをみていて、よなかにしのびこんできました。
   そして、あり金をのこらずぬすんでいってしまったのです。
   ふたりはガッカリして、
  「一文なしでは、どうにもならん。よそへいって、はたらくとしよう」
   おじいさんは、たくさんのにもつをせおい、おばあさんは、あまどを一まいせおって、たびにでかけました。
   やがて日がくれたので、ふたりが、ちんじゅさま(→土地の神をまつった社)の大きな木のしたでやすんでいると、どろぼうたちがやってきたので、ふたりはいそいで木にのぼって、かくれることにしました。
   どろぼうたちは、そんなこと、ちっともしりません。
   ぬすんできたたからものやお金を、みんなでかぞえはじめました。
   おばあさんは、木につかまっているだけでもやっとなのに、せなかにせおっているあまどがおもたくてかないません。
  「おもい、しんどい、くたびれた」
  と、ぶつぶついいだしました。
   すると、おじいさんが、
  「どろぼうにきこえたら、ただではすまんぞ。だまっておれ」
  と、たしなめましたが、おばあさんは耳がとおいので、
  「あまどをおろして、すててもよい」
  と、ききちがえてしまい、
  「ああ、よかった」
  と、あまどをおろしました。
   あまどは、バタン、ドタン、ガタンと、大きな音をたてながら、どろぼうたちのあたまのうえに、おちていきました。
   おどろいたのは、どろぼうたちです。
  「テングさまじゃあ! にげろ!」
   たからもお金もおいて、バラバラににげだしてしまいました。
   おじいさんとおばあさんは、どろぼうたちがおいていったものをひろいあつめて村にかえり、たいそうなお金持ちになりました。
おしまい