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6月4日の日本の昔話
  
  
  
  たのまれたてがみ
 むかしむかし、ある男が、大きな沼(ぬま)のそばをとおると、沼のなかからきれいなむすめがでてきて、
  「ちょっと、おねがいがあるのですが」
  と、男をよびとめました。
  「このさきのほうに、もうひとつ沼がありますから、そこへいって、タンタンと手をうつと、わかものがでてきます。そのわかものに、このてがみをわたしてください」
  「ああ、いいとも」
   男はこころよくひきうけて、もうひとつの沼のほうへあるいていくと、とちゅうに茶店がありました。
   男は茶店の主人と、むかしからの顔なじみです。
  「のどかわいたから、お茶を一ぱいくれ」
   男が茶店にこしをおろすと、
  「これから、どこさいくつもりだね」
  と、主人がききました。
   そこで、男がわけをはなすと、主人はくびをひねりました。
  「沼のむすめに、てがみをたのまれただって。へんなことがあるものだ。ちょっとみせろや」
   男があずかったてがみをひろげると、そこにはなんと、
  《この男は、うまそうなむらさきいろのしりをしている。とって、くうべし》
  と、おそろしいことが、かかれていました。
  「おそろしいことだ。しらずにてがみをとどけたら、くわれるところだったぞ。・・・うん。まてよ。・・・よし、わしに、いいかんがえがある」
   茶店の主人は、ふでをとると、
  《この男には世話になった。小判をとらせてやるべし》
  と、てがみをかきかえて、男にもたせました。
   男がとなりの沼へいって、タンタンと手をたたくと、むすめがいったとおり、沼のなかからわかものがでてきました。
   わかものは、てがみをうけとると、
  「そうか、わかった。少し待っていろ」
   沼にもぐると、手にふくろを持ってあらわれ、
  「これを、もってゆけ」
   そのふくろを差しだしました。
   中を開けてみると、小判がたくさん入っています。
   男はそれを茶店の主人とわけあい、ふたりはお金持ちになりました。
おしまい