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1月2日の小話
主人おもいのこぞう
   元日の朝。
   あるお店のだんなが、こぞうをおともにつれて、年始(ねんし)まわりをしておりました。
   たずねていった家のげんかん先で、だんなが、おくの部屋に向かって、
  「ごめんください。ごめんください」
  と、大きな声でよびかけるのですが、何度よんでも返事がありません。
   しばらく間をおいて、またよびかけるのですが、やはり同じことです。
   すると、そばにいた、おとものこぞうが、大きな声で、
  「はーい」
  と、返事をしました。
   だんなが、おこって、
  「バカめ! おまえが返事をして何になるのだ!」
  と、どなりつけました。
   こぞうは、大まじめな顔をして、
  「でも、このまま、だれも返事をしてくれませんと、だんなさまが、さぞおつかれになるだろうとおもいましたので、気をきかせました」
おしまい