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5月30日の小話
むだなしるし
   わたし舟にのったお客が、命から二番めに大事にしていた銀のきせる(きざみたばこを吸うためのパイプ →詳細)を、川の中におとしてしまいました。
  「しまった!」
   客があわてていると、舟頭(せんどう→船をあやつる人)もあわてて、
  「どこらへんに、おとしました」
  「ここだ、ここだ」
   お客が、舟べりの、おとしたあたりを指さすと、舟頭は、
  「うむ、ここか」
   そういって、指につばをつけ、船べりにしるしをつけました。
「さあ、しるしをつけたからもう大丈夫です」
おしまい