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2月17日の日本民話
ウナギ釣り
兵庫県の民話
むかしむかし、川の中に腰まで入って、ウナギ釣りをしている人がいました。
ミミズをつけた釣り針をさし込んで、ウナギのかかるのをジッと待っています。
でも、三十分たっても一時間たっても、ウナギは釣れそうにありません。
それを岸に立って、さっきからジッと見ていた人が、イライラして言いました。
「いっぺんあげてみたらどうだね。もしかしてエサがなくなっているかもしれないよ」
おせっかいなその言葉に、
(ふん、なにを言いやがる。お前なんぞにウナギの釣り方がわかってたまるもんか)
と、ウナギ釣りをしている人は、心の中でそう言いましたが、でももしかすると、本当にミミズがなくなっているかもしれません。
そこで思いきって、釣り針をあげてみました。
しかしミミズは、ちゃんと釣り針についたままです。
「なんだ、まるでくってないじゃないか」
ウナギ釣りをしている人ではなく、岸の上の人がガッカリして言いました。
(よけいなお世話だ。だまって見ていろ)
ウナギ釣りをしている人はそう思って、少し腹を立てましたが、もう一度、釣り針を川の中にさしこみました。
ところがいくら待っても、ウナギのかかったようすはありません。
それでもジッとがまんして、ウナギのかかるのを待っていました。
やがて岸の上の人が、がまんできずに言いました。
「お前さん、そんなにのんびりかまえていて、ウナギなんか釣れるもんかね。わたしゃさっきから見ているが、じれったいたらありゃしない。よくもまあ、あきずに立っていられるもんだ」
それを聞くと川の中の人は、腹を立てて岸の上に向かって大声で言いました。
「そっちこそなんだよ。釣れもしないのにいつまでも見ていて。じれったいたらありゃしない。よくもまあ、あきずに立っていられるもんだ」
そう言われて岸の上の人も、ハッと気がつきました。
ウナギ釣りに気をとられていて、仕事にいくのをすっかり忘れていたのです。
岸の上の人は大あわてで荷物をかつぎなおし、あわてて仕事に行ったという事です。
おしまい