|
|
福娘童話集 >イースター たまごのお話し >ホジャおじさんのゆで卵裁判
たまごのお話し 第 2 話
ホジャおじさんのゆで卵裁判
トルコの昔話 → トルコの情報
むかしむかし、トルコの国に、ナスレッディン・ホジャという、とても変わった人がいました。
ある時、ホジャおじさんの友だちが、食べ物屋で、ゆで卵二個とパンを一個食べたのですが、お金を払う時になって財布を忘れてきたのに気がつきました。
「お金は、あとでもいいですよ」
店の主人がそう言ってくれたので、今度来た時に払う約束をして帰りました。
ところがすぐに、友だちは急用で旅に出ました。
一年ぶりに帰ってきた友だちは、さっそく食べ物屋をたずねました。
「すみません。ずっと前に借りたお金を返したいのだけど、いくらでしたかね?」
すると主人は、何やら計算をしていましたが、
「はい、全部で金貨二十枚いただきます」
と、言ったのです。
「えっ? わたしが食べたのは、ゆで卵二個とパンが一個ですよ。そんなに高いはずはないでしょう」
「へい、確かにそうですが、なにしろ、あれから一年以上もたっていますからねえ。
あの時、あの卵をあなたが食べなかったとしたら、二個の卵からヒナがかえって、やがて二羽の親鳥になりますでしょう。
その親鳥が次々に卵を産んで、それがまたヒナになって親鳥になる。
こうやってかんじょうすれば、金貨二十枚でも安いくらいですよ」
「そんなバカな話があるか! わたしは卵二個とパンを一個の代金しか払わないぞ!」
「いいえ、どうしても払ってもらいますよ」
それでとうとう裁判で、どちらが正しいかを決めてもらう事になりました。
(しかし、もし裁判で負けたらどうしよう? 金貨二十枚なんて、払えないぞ)
困った友だちは、ホジャおじさんのところへ助けをもとめました。
わけを聞いたホジャおじさんは、ニッコリ笑って言いました。
「よし、わしにまかしておきなさい。裁判では、きみの弁護士になってあげるよ」
そして、裁判の日になりました。
ところがいくら待っても、ホジャおじさんが姿を見せないのです。
「お前の弁護士はまだか? いやに遅いな」
裁判官がイライラしはじめたところへ、ホジャおじさんがやって来ました。
「どうしたのじゃ! こんなに遅れるとは、けしからん!」
「はい、実は畑で大豆を作ろうと思って、畑にまく豆を今までゆでていたのです。ところが、これがなかなか煮えなくて」
「何じゃと? 煮た豆を畑にまくだと? 煮た豆から大豆がとれるか。ばかな事を言うな」
するとホジャおじさんが、すました顔で言いました。
「だって裁判官さま、この裁判は、ゆで卵からヒナがかえって、それがどんどん増えていったらという話でしょう。
ゆで卵からヒナがかえるのなら、ゆでた豆からだって大豆がとれるはずでしょう」
「うーん、なるほど。たしかにその通りだ」
裁判官は、ホジャおじさんの説明に感心しました。
こうして裁判は、友だちの勝ちになったのです。
おしまい
|
|
|