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        福娘童話集 >お花見・桜のお話し > きりょうじまん 
         
      お花見・桜のお話し 第 5 話 
       
        
      きりょうじまん 
      
      
       今日は、暖かい春の日差しが心地よい四月。 
 上野の山は花見の客で、大賑わいです。 
 そこへ、大旦那の娘さんが女中(じょちゅう→住み込みのお手伝いさん)を連れて、お花見に出かけました。 
 この娘さん、なかなかのきりょうよし(→美人の事)なのですが、何かにつけてけちをつけるくせがあります。 
「ああ、たいしたのはいないねえ」 
 満開の桜よりも道行く娘たちの顔が気になる様で、出会う娘の一人一人にけちをつけて歩きました。 
「あれは、背が低いね」 
「あっちは、背が高すぎる」 
「あの娘は口は小さいが、目が大きすぎる」 
「あれはだめ、色が黒い」 
「あっちは色白だけど、ひたいが広すぎる」 
 こんな調子で、出会う娘を何のかんのと、けなし続けて、娘は不忍池(しのばずのいけ→上野にあるハスの名所)までやって来ました。 
 そして池の水にうつった、自分の顔を見ると、 
「ああ、これもあんまり、感心した顔じゃないね」 
と、言いました。 
         
         
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