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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 金の粒を出す馬
2008年 9月9日の新作昔話
金の粒を出す馬
新潟県の民話→ 新潟県情報
むかしむかし、新潟のある山の近くの村に、仲のよいおじいさんとおばあさんがいました。
二人は、おじいさんが山で取ったたきぎを町へ売りにいって、くらしていました。
ある年の暮れ、おじいさんはたきぎを売って、お正月を祝う品々を買ってこようと町へ出かけていきました。
たきぎは売れたのですが、買えたのは串柿(くしがき)とスルメだけでした。
とぼとぼ帰りながら大川の橋の中ほどまでくると、おじいさんは背中のしょいこにくくりつけた串柿とスルメを、
「ほれ。わしから川のものへの歳暮じゃよ」
と、いって、川へ投げこんでしまいました。
そして長い橋をわたりきると、いつの間にか橋のたもとには美しい娘がいて、おじいさんに頭を下げたのです。
「さきほどは、ありがとうございました。お礼をしたいので、家においでください」
「お礼? わしはあんたに、なんにもしてないが」
おじいさんがいうと娘は、
「いいえ。串柿とスルメの歳暮を、たしかに頂きました。是非ともお礼をいたします。家まで案内しますので、目をつぶってください」
と、おじいさんに目をつぶらせました。
そしてすぐ、娘が言いました。
「さあ、家に着きました。目を開けていいですよ」
「着いたといっても、一歩も歩いておらんが。・・・おおっ!」
おじいさんが目を開けてみると、なんと目の前に立派な御殿があるのです。
御殿に案内されたおじいさんは、おいしいものをたくさんごちそうになり、そして帰ろうとすると、娘の母親が絹の布につつんだきれいな手箱をくれました。
「これは、だれにも見せてはなりません。この二つの引き出しには、小さな馬とお米が入っています。馬にお米をやると、金の粒を出してくれます」
おじいさんが手箱を受け取ると、目の前の景色がパッと消えて、いつの間にか橋のたもとへもどっていました。
さて、家に帰ったおじいさんは、おばあさんにはないしょで米が入った引き出しから米粒を一つ取り出して、小さな馬にやりました。
すると馬はすぐに、お尻から金の粒を出しました。
さあ、それからおじいさんは家のお金がなくなると、こっそり奥の部屋へ入っては、小さな馬に米粒を食べさせて金の粒を出させました。
ある日の事、おばあさんはおじいさんの留守に、押し入れに隠してあるきれいな手箱を見つけました。
「これは、なんだろうね」
引き出しを開けてみると、中に米が入っています。
もうひとつの引き出しを開けてみると、中に小さな馬がいて、ヒヒヒーンと鳴きました。
「おや、腹がすいとるんか」
おばあさんが米を一粒やると、馬はすぐにお尻から金の粒を出しました。
「なるほど。おじいさんは、これで金の粒を出していたんじゃな」
おばあさんはうれしくなって、どんどんお米をやりました。
すると小さな馬は米を食べては、ポトン、ポトンと金の粒を出します。
そしてお腹がいっぱいになった馬は、元気に部屋の中を走りまわり、ポトン、ポトンと金の粒を出し続けます。
「こらこら。もう戻らんか。おじいさんに見つかったら、大変じゃ」
おばあさんが馬を追いまわすと、馬はお尻から金の粒を出しながら庭へ飛び出し、佐渡島へ逃げていったのです。
佐渡の山から金がたくさん取れるようになったのは、そのためだと言われています。
おしまい
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