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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 別所温泉
2008年 11月22日の新作昔話
別所温泉
長野県の民話 → 長野県情報
むかしむかし、長野のある山のふもとの村里から、夜になると光がたちのぼりました。
そして地の底が、ゴウゴウとうなりだして、やがて大きな穴が地面に開き、そこから火が燃えあがって、黒い煙がふきあがったのです。
火と黒い煙は、日ごとにはげしくなっていきました。
火の熱さで里の家々は火事になり、犠牲になる人たちも出てきました。
困った里の人たちは、都の朝廷に訴えました。
それを聞いた天皇は、星の動きなどから物事を占う天文博士に占わせると、
「まことに不思議なことですが、仏の縁(えにし)によるものです」
と、いうのでした。
仏さまに関係があるということなので、天皇は偉いお坊さんを長野の村に送って、今度は祈りによって原因をさぐることにしました。
すると山のふもとの穴から、これまでふきあげていた黒煙にかわって紫色の煙がたちのぼり、雲になって天にのぼっていきました。
天にのぼった紫色の雲は、ゆっくりと山の方へたなびいていきます。
「むかしから紫色の雲は、おめでたい雲だといわれておるが」
お坊さんはそう言うと、いっそう声をはりあげてお経を唱えました。
そのとき、紫色の雲の中から、光りかがやく女性の仏さまが現れたのです。
そしてお坊さんに、こう告げました。
「われは、世をすくう観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)です。われの像をつくって、この地にまつりなさい。さすれば、よいことが起こるであろう」
いいおわると仏さまは、紫色の雲とともに、天にのぼっていきました。
「では、さっそく観世音菩薩さまをつくってみよう」
お坊さんは、すぐに一体の観世音像を彫り上げて、その像をお堂にまつりました。
すると穴から出ていた火と煙は、だんだん弱くなって消えていきました。
そして今度は、黒くてあたたかい湯がゴボゴボと、地の底からわき出してきたのです。
このあたたかい湯が、のちに病気治療によく効く別所温泉になったのです。
おしまい
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