福娘童話集 > 新作の紹介 福娘童話集 きょうの新作昔話 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
     3月19日の豆知識

366日への旅
きょうの記念日
アカデミー賞設立記念日
きょうの誕生花
ベロペロネ(こえびそう)
きょうの誕生日・出来事
1955年 ブルース・ウィリス (俳優)
  3月19日の童話・昔話

福娘童話集
きょうの日本昔話
水アメの毒
きょうの世界昔話
ピアンとサル
きょうの日本民話
ブッポウソウのこえ
きょうのイソップ童話
カラスとヘルメス
きょうの江戸小話
ぬすびとの辞世
広告
 


福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 地中で三十三年

2009年 3月19日の新作昔話

地中で暮らしていた人

地中で三十三年
長野県の民話長野県情報

 今から二百年ほどむかし、浅間山(あさまやま)のふもとにすむ若いお百姓が、畑のわきに井戸を掘り始めました。
 ところが、いくら掘っても水は出てこずに、そのかわり七、八メートルほど掘ると、屋根にのせる瓦がならんで出てきました。
「はて? こんなところに、どうして屋根瓦があるんじゃ?」
 瓦をどけると、ズボッと穴が開きました。
 中をのぞきこむと、大きなほら穴があるではありませんか。
 お百姓は家にもどると、ちょうちんを持って、まっ暗な穴へおりていきました。
 中を調べてみると、どうやら大きな家が土の中にうまっているようです。
「竜宮城は、海の底にあるという。地の底にも、竜宮城のような物があって、おれはその人たちの家の屋根に穴を開けてしまったのかもしれんぞ。しかしそれにしても、大きな家だな」
 お百姓は足元を気にしながら、おそるおそる奥へ入っていきました。
 すると奥には、たくさんの酒樽がならんでいました。
 その間を通って進むと、酒樽によりかかって、二人のおじいさんが座っていたのです。
 頭の毛はボーボーで、長いひげは床まで伸びています。
 若いお百姓はびっくりしましたが、勇気を出してたずねました。
「あなた方は、どなたですか? こんなところで、何をしているのですか?」
 ちょうちんの灯がまぶしいのか、おじいさんたちは両手で目をかくしました。
 そして、おじいさんの一人が答えました。
「いつだったか忘れたが、浅間の山が爆発したとき、わしらはこの酒蔵に逃げ込んだのだが、すぐあとに山くずれがおこってな。この蔵と一緒に、ここにうめられてしまったんじゃ」
 それを聞いて、若いお百姓はびっくりです。
 浅間山が大噴火をして大きな山くずれが起きたのは、自分もまだ生まれていない、三十三年も前の事なのです。
「三十三年も二人で、よくこんなところで生きて」
 若いお百姓のつぶやきに、もう一人のおじいさんが答えました。
「ああ、この蔵には三千樽の酒と、三千俵の米があったからな。おかげで今日まで、わしらは生きてこられたんじゃ。だが、その米も、もうあとわずか。まっ暗でまったく動けないし、これからどうするかと二人で話しておったところじゃ。地上からきたあんたと会えて、こんなうれしいことはない」
 二人のおじいさんはそういいながら、なみだを流して喜びました。
 若いお百姓は、村の人たちを大勢呼んでくると穴を広げて、光をまぶしがるおじいさんたちを少しずつ明るいところへ移しながら、何日もかかって、やっと地上へ連れ出したのです。
 その後、おじいさんたちは地上の生活にもすっかりなれて、病気ひとつせずに、おだやかな余生をすごしたという事です。

おしまい

ページを戻る

新作の紹介メニュー

福娘童話集

新作の紹介
福娘のサイト
366日への旅
毎日の記念日・誕生花 ・有名人の誕生日と性格判断
福娘童話集
世界と日本の童話と昔話
女の子応援サイト さくら
職業紹介・誕生日占い・おまじないなど
子どもの病気相談所
病気検索と対応方法、症状から検索するWEB問診
世界60秒巡り
国旗国歌や世界遺産など、世界の国々の豆知識