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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 戻橋(もどりばし)の鬼女(きじょ) 
      夏の怖い話し特集 
2009年 7月22日の新作昔話 
          
          
         
        戻橋(もどりばし)の鬼女(きじょ) 
        京都府の民話 → 京都府県情報 
       むかしむかし、源頼光(みなもとのらいこう)の家来で、渡辺綱(わたなべのつな)という人がいました。 
         綱はとても優れた武者で、主人の頼光からとても大事にされていました。 
         ある時、綱は主人の言いつけで、京のはずれまで出かけることになりました。 
         その帰り道のことです。 
         一条戻橋(いちじょうもどりばし)にさしかかった時、橋のたもとにいる女の人に気が付きました。 
         見ると、この世の者とは思えないほど美しい女の人です。 
        「どうされたのですか? こんなところに、たった一人で」 
         綱が尋ねると、その女の人は、 
        「はい、私はさるお方のお使いでこのあたりまでやってまいりましたが、帰る道に迷って、途方にくれておりました。あの、もしよろしければ、どうぞ私を都までお連れ下さいませんか」 
        と、頼みました。 
        「わかりました。では、わたしの馬にお乗り下さい」 
         綱は女の人を自分の馬の後ろに乗せましたが、橋の中ほどまできた時、なにげなく水にうつった女の人を見てびっくりです。 
         なんと自分の後ろにうつっているのは、恐しい鬼だったのです。 
        「貴様!」 
         綱が振り返ったと同時に、鬼もその姿を現して、 
        「あははははっ、我々の仲間を数多く殺した恨み、いまこそはらしてくれるわ」 
        と、丸太のような腕で綱の体を軽々とつかむと、ふわりと空へ舞い上がり、そのまま空を飛んで鬼の住み家である愛宕山(あたごやま)へと向かいます。 
        (ぬぬっ、このままではまずい!) 
         綱は、何とか腰の刀を抜きました。 
         すると、それを見た鬼が大笑いします。 
        「あははははっ、我を斬るつもりか? 今、我を斬ると、お前は地面に落ちて死ぬことになるぞ」 
         たしかに、この高さから落ちては助かりません。 
         しかしその時、自分たちが進む方向に、北野天満宮(きたのてんまんぐう)の屋根が見えてきました。 
        (うまくあの上に降りることが出来れば、怪我ぐらいですむかもしれん。天神さま、どうぞご加護を) 
         綱は意を決すると、自分をつまみ上げている鬼の腕を切り落としました。 
        「ウギャーーー!」 
         腕を切り落とされた鬼は大きな悲鳴を上げると、そのまま愛宕山に向かって消えてしまいました。 
         そして、何とか北野天満宮の屋根に降りることが出来た綱は、大した怪我もせずにすみました。 
         無事に家に帰ることが出来た綱は、 
        (自分が生きているのは、全て天神さまのおかげです。ありがとうございました) 
      と、感謝すると、とても立派な灯籠を納めて、それから後も信心に励んだということです。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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