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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 鬼のお面で親分に
2014年11月14日の新作昔話
鬼のお面で親分に
宮城県の民話 → 宮城県の情報
むかしむかし、太郎兵衛という名前の、とても臆病な子どもがいました。
ある日の事、村の子どもたちが太郎兵衛を囲んで言いました。
「この頃、八幡さまに鬼が出るといううわさじゃ。太郎兵衛、お前一人で行って確かめて来い」「えっ! 一人で?」
「そうだ。もし行かないと言うなら、もうお前とは遊ばんからな!」
「そんな・・・」
臆病者の太郎兵衛が、一人でそんな怖いところへ行けるはずがありません。
でも、仲間はずれになるのはもっと嫌でした。
「わかった。おら、一人で八幡さまに行く」
そう言って太郎兵衛は、家に戻っていきました。
「太郎兵衛のやつ、本当に来るかな? もし来たら、腰を抜かして泣き出すぞ」
一人の子どもがそう言って、鬼の面を取り出しました。
子どもたちは先に八幡さまへ行って、この鬼の面で太郎兵衛をおどかすつもりです。
さて、家に戻った太郎兵衛は、どうしたらいいかと考えました。
お母さんに頼んで一緒に行ってもらおうかとも思いましたが、でもそれがばれれば、太郎兵衛はずっと馬鹿にされてしまいます。
(何か良い方法がないかな?)
太郎兵衛がキョロキョロしていると、床の間に飾ってある鬼の面が目に入りました。
節分の時にお父さんがかぶる、鬼の面です。
(そうだ。鬼の面をかぶれば、鬼が出てきても仲間だと思って、襲ってこないかもしれないぞ)
そこで太郎兵衛は、鬼の面をかぶって家を出ました。
そしてやっと八幡さまに来て、どきどきしながら境内に入っていったら、いきなり木の影から鬼が飛び出してきたのです。
「お、お、鬼だ!」
その鬼は、友だちが鬼の面をかぶったものだったのですが、驚いた太郎兵衛は、その場で気を失ってしまいました。
そして、鬼の面をかぶった友だちも同時に、
「ひえっ!」
と、叫んで、気を失ってしまったのです。
しばらくして、太郎兵衛が目を覚ましました。
横を見ると、鬼の面が取れた子どもが倒れています。
それは太郎兵衛に、一人で八幡さまへ行って来いと言った子どもです。
「何だ。本物の鬼じゃなかったのか」
太郎兵衛は、ほっとして立ち上がりました。
境内を出ると、ほかの子どもたちが様子を見にやって来るところでした。
「よし、仕返しだ」
太郎兵衛は急いで近くの木のかげに隠れると、子どもたちの前にいきなり飛び出しました。
「こらー! 悪い子どもは食ってしまうぞ!」
びっくりした子どもたちは、まっ青になって逃げて行きました。
「お、お、鬼だーーー!」
それを見て、太郎兵衛はお腹をかかえて笑いました。
そして大いばりで、家へ帰っていきました。
そんな事があってからは、みんなは太郎兵衛の勇気を認めて、太郎兵衛は子どもたちの親分になったのです。
おしまい
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