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2019年6月24日の新作昔話
米のご飯を腹一杯
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
吉四六さんは、いばっている人が大嫌いで、そんな人は得意のとんちでやっつけたりしますが、貧しい人や困っている人にはとても親切な人でした。
ある時、吉四六さんは近所の貧しい家の子どもを預かりました。
「なあ、坊主、お前の一番の望みは何だい?」
吉四六さんが尋ねると、子どもが言いました。
「ああ、おら、一度でいいから、米のご飯を食べてみてえ」
それを聞くと吉四六さんは、何とかしてお米のごはんを食べさせてやりたいと思いました。
でも、その頃のお百姓さんは貧乏で、食べ物はアワかムギのおかゆで、お米のご飯は、お祭りや祝い事などの特別な時しか食べる事が出来ませんでした。
「弱ったなあ。お祭りは、まだまだ来ねえし」
そこで次の朝、吉四六さんはわざと外へ行くとすぐ戻って来て、おかみさんに言いました。
「実は、今日は村のみんなで、壊れた道を直す事になった。だから早く弁当を作ってくれ」
村の仕事で出かけるとなると、弁当を作らないわけにもいきません。
それにみんなと一緒に食べるのですから、アワやムギでは恥ずかしいので、おかみさんはとっておきのお米を炊いて弁当箱に詰め、干し魚もたくさん入れてあげました。
「ありがとよ」
吉四六さんは弁当を持って、あわてて家を飛び出して行きました。
ところがしばらくすると、がっかりした顔で帰ってきたのです。
「まったく、しょうのない話だ。せっかく弁当を持って行ったのに、急に仕事が取り止めになった。もう少し早く教えてくれれば 弁当なんか作らずにすんだものを」
吉四六さんは、わざと怒ったふりをしました。
それから急に、やさしい顔になって言いました。
「しかし、せっかくの弁当を捨てるわけにもいかん。どうだろう、この弁当をあの子に食わせてやっては? きっと喜ぶぞ」
するとおかみさんは、ようやく吉四六さんのやろうとしていた事が分かって、
「ええ。そうしてあげましょう」
と、にっこり微笑みました。
「あはは。まったく、お前はいい嫁さんだ」
そこで吉四六さんは、さっそく子どもを起こしてくると、
「ほら、米のご飯だ。これは全部、お前が食ってもいいんだぞ」
と、言って、腹一杯米のご飯の弁当を食べさせてあげました。
「おいしい! おいしい!」
夢中で弁当を食べている子どもを見ながら、吉四六さんとおかみさんは顔を見合わせて、
「よかった、よかった」
と、言いました。
おしまい
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