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福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話 > へっついゆうれい 
      1月9日の日本の昔話 
          
        
      へっついゆうれい 
      
       むかしは、どこの家の台所にも、土でできた、へっついという道具がありました。 
   ひらたくいえば、かまどのことです。 
   これがないと、ごはんがたけません。 
   さて、ある町に、いせいのいい大工(だいく)さんがいました。 
   あるとき、この大工さんの家のへっついが、こわれてしまいました。 
   でも、新しいへっついを買うほど、お金がありません。 
   そこで、古道具屋(→リサイクルショップ)へでかけました。 
  「おやじ、へっついのほり出し物はねえか?」 
  「へい、ございますとも。これなど、いかがでしょうか。お安くしておきます」 
   おもったよりも安くかえたので、大工さんはホクホクしながら、そのへっついを台所にすえつけました。 
  「これで、あしたの朝は、おまんまがたけるってわけだ。ありがてえ、ありがてえ」 
   さて、そのばん、大工さんはま夜中にふと、のどがかわいて目がさめました。 
  「どれ、水でも飲むか」 
   台所におりて、水がめの水をグググッと、うまそうに飲んだ大工さんが、なにげなく、へっついに目をやると、 
  「ややっ!」 
   青白いおに火が、チロチロしているではありませんか。 
   おに火は、本当の火ではありません。 
   ゆうれいが出てくるときのほのおです。 
   大工さんはビックリです。 
  「えんぎでもねえ、うすきみのわるいへっついを買っちまったもんだ」 
   大工さんがこわごわながめていると、今度は、そのへっついから、すすでよごれた男のうでが一本、ニューーッと出てきました。 
  「うわあー!」 
   大工さんは、つぎの朝、さっそく古道具屋へ、へっついを返しにいきました。 
  「なにか、あやしいことでもありましたか?」 
   古道具屋は、くびをひねりました。 
  「あったもなにも、このへっついから、ゆうれいが出るんだ。ほかのへっついととりかえてくれ」 
  「それはかまいませんが、あなたにかっていただいたこのへっついは、これまで何度もかわれては、すぐにもどされます。なんでも夜中におに火がもえたり、男のうでがでてくるとか」 
  「そのとおりだ! こんなへっついをしょうちでうるなんて、とんでもねえ。金をかえしてくれ」 
   大工さんにいわれて、古道具屋は、なるほどとおもい、 
  「それなら、いっそのこと、たたきこわしてみましょう」 
   古道具屋と大工さんは、へっついをうちこわしました。 
   すると中から、小判が五まいも出てきたのです。 
   そこで古道具屋が、このへっついのもとの持ち主をしらべると、持ち主の男は、しばらくまえに死んでいることがわかりました。 
  「せっかくためたお金を、どろぼうにとられないよう、へっついにぬりこんだまま死んでしまったので、それが気にかかって、ゆうれいとなって出てきたのだろう」 
   古道具屋と大工さんは、坊さんを呼んで、死んだ男とへっついのくようをしてあげたそうです。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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