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3月23日の日本の昔話
本当の母親
正哀仔
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかし、江戸の下町(したまち)に、おしずと、たいちという親子が住んでいました。
頭過,有二子哀安到oshizu(おしず)摎taichi(たいち),戴在江户鬧熱个街路。
(たいちは、今年十才になるかわいい男の子です。)
(taichi(たいち)今年正十歲个細賴仔。)
おしずはたいちを、とてもかわいがって育てていたのです。
oshizu(おしず)畜taichi(たいち)畜著當得人惜。
ところがある日、突然、おこまという女の人がやって来て、
毋過,有一日,一個安到okoma(おこま)个餔娘人忽然間走來,講:
「おしずさん、たいちはわたしの息子。
「oshizu(おしず)先生,taichi(たいち)係吾倈仔。
むかし、あなたにあずけたわたしの息子です。
返してください!」
と、言うのです。
頭過搭你渡个係吾倈仔,還𠊎。」
おしずは驚いて、
oshizu(おしず)著驚:
「何を言うのです。
あなたからあずかった子は、もう十年も前に亡くなったではありませんか。
この事は、おこまさんだって知っているでしょう」
「講麼个呀!你搭个倈仔,十年前死忒了毋係嘎?這件事情okoma(おこま)先生乜知無係咩!」
「いいえ、うそをいってもだめです。
「毋係,毋好儘採講!
お前さんは自分の子が死んだのに、わたしの子が死んだと言ってごまかして、
你自家个倈仔死忒,騙講𠊎个倈仔死忒,
わたしの息子をとりあげてしまったんじゃありませんか。
摎𠊎个倈仔佔去做若倈仔。
わたしはだまされませんよ。さあ、すぐに返してください!」
𠊎無恁好騙,倈仔遽還𠊎!」
おこまは、怖い顔でそう言いはるのです。
okoma(おこま)變面講:
おしずが、いくら違うと言っても聞きません。
毋管oshizu(おしず)仰般辯解又毋聽,
毎日、毎日、おこまはやって来ては、同じ事をわめきたてて行くのです。
okoma(おこま)逐日逐日來吵鬧共樣个事情。
そしてしまいには、顔に傷のある恐ろしい目つきの男を連れて来て、
包尾渡一個面有刀痕、目神盡得人驚个男仔人來,
「さあ、早く返してくれないと、どんな目にあうかわからないよ!」
と、おどかすのです。
「無遽兜還𠊎,會發生麼个事情𠊎就毋知哦!」
恐嚇佢講:
おしずは困り果てて、町奉行(まちぶぎょう)の大岡越前守(おおおかえちぜんのかみ)に訴えました。
oshizu(おしず)無結無煞,去投町奉行大岡越前守。
越前守は話を聞くと、おこま、おしず、たいちの三人を呼びました。
越前守聽著後就喊okoma(おこま)、oshizu(おしず)、taichi(たいち)三儕來。
「これ、おこま。お前は、そこにいるたいちを自分の息子だと言っているそうだが、何か証拠はあるのか?」
「okoma(おこま),你講這個taichi(たいち)係若倈仔係無,該有麼个證據無?」
「はい。実はこの子が生まれました時、わたしはおちちが出なかったので、おしずさんにあずけたのです。
「事實𠊎降細人仔个時節無奶个関係,搭oshizu(おしず)先生畜。
この事は、近所の人がみんな知っています。
誰にでも、お聞きになってください」
這件事情鄰舍逐儕乜知,你做得尋儕人來問啊。」
おこまは、自信たっぷりに答えました。
okoma(おこま)自信滿滿應。
では、おしずに尋ねる。
續等問oshizu(おしず):
「お前は、おこまの子どもをあずかった覚えがあるのか?」
「你記得okoma(おこま)个倈仔搭你畜个事情無?」
「はい。ございます」
「記得,有這事情。」
おしずは、たいちの手をしっかりと握りしめて言いました。
oshizu(おしず)揢等taichi(たいち)个手講:
「この子が生まれた時、わたしはおちちがたくさん出ました。
「降這个倈仔个時節𠊎有當多奶,
それで、おこまさんの子どものひこいちをあずかったのです。
所以okoma(おこま)个賴仔彥一正會搭𠊎畜,
でも、その子はまもなく病気で死んでしまいましたので、すぐにおこまさんに知らせたのでございます」
毋過無幾久發病仔死忒,黏時通知okoma(おこま)先生。」
おしずの言葉を聞くと、おこまは恐ろしい目で、おしずをキッと、にらんで叫びました。
聽著oshizu(おしず)恁仰講,okoma(おこま)目珠擘大大,用當得人驚个眼神䁯人,噦噦嘶嘶講:
「このうそつき!お奉行(ぶぎょう)さま、おしずは大うそつきです。
死んだのは、おしずの子です。わたしの子どもを、返してください!」
「這個耗漦牯!奉行大人,oshizu(おしず)講耗漦,死忒个係厥倈仔。𠊎倈子還𠊎。」
「いいえ、死んだのは、確かにひこいちだったんです。
お奉行さま、間違いありません。おこまの子は、死んだのです」
「正毋係,死忒个確實係彥一,奉行大人,毋會毋著,okoma(おこま)个倈仔死忒了!」
「まだそんな事を言って!人の子を盗んだくせに!」
「還恁樣講!偷人个倈仔个賊仔!」
「たいちはわたしの子だよ。誰にも渡しゃしない。わたしの大事な子なんだ!」
「taichi(たいち)係𠊎个倈仔哦!麼儕都毋會交分佢。係𠊎寶貝倈仔!」
二人はお奉行さまの前である事も忘れて、言い争いました。
二儕毋記得係在奉行大人面頭前,你一句𠊎一句在該相詏仔。
その二人の様子をジッと見つめていた越前守は、やがて、
越前守一直看佢兩儕,看一陣仔,
「二人とも、しずまれっ!」
「二儕都摎𠊎恬恬!」
と、大声で叱りました。
就大聲咄講:
おこまとおしずは、あわてて恥ずかしそうに座りなおしました。
okoma(おこま)摎oshizu(おしず)兩儕感覺盡見笑樣,煞煞坐轉去。
「おこま。その息子がお前の子どもである、確かな証拠はないか?
「okoma(おこま),該個倈仔講係若賴仔,敢有確實个證據?
たとえば、ほくろがあるとか、きずあとがあるとか。
像講有烏痣無?有疤無?
そう言う、めじるしになるような物があったら、言うがいい」
像床公婆做記號該兜東西,假使有講出來!」
おこまはくやしそうに、首を横に振りました。
okoma(おこま)感覺盡遺憾樣緊搖頭。
「・・・いいえ。それが、何もありません」
「...無,麼个都無。」
「では、おしず。そちはどうじゃ?」
「該oshizu(おしず)你斯咧?」
おしずも残念そうに、首を振りました。
oshizu(おしず)又乜共樣緊搖頭。
「・・・いいえ。何もございません」
「...無,麼个都無。」
「そうか」
「恁樣哦?」
越前守はうなずいて、
越前守頷頭講:
「では、わしが決めてやろう。
「無斯𠊎來決定,
おしずは、たいちの右手をにぎれ。
oshizu(おしず)拉taichi(たいち)个正手,
おこまは、たいちの左手をにぎるのじゃ。
okoma(おこま)拉左手。
そして引っぱりっこをして、勝った方を本当の母親に決めよう。よいな」
兩儕相挷仔,贏个人就係正哀仔,好無?」
「はい」
「好!」
「はい」
「好!」
二人の母親は、たいちの手を片方ずつにぎりました。
兩個哀仔一儕拉一片taichi(たいち)个手。
「よし、引っぱれ!」
「好!開始拉!」
越前守の合図で、二人はたいちの手を力一杯引っぱりました。
在越前守个指揮下,二儕拚死命挷taichi(たいち)个手,
「いたい!いたい!」
「恁痛!恁痛!」
小さいたいちは、両方からグイグイ引っぱられて、悲鳴をあげて泣き出しました。
細細个taichi(たいち)分佢兩儕連續出大力拉,大聲噭出來。
その時、ハッと手を離したのは、おしずでした。
該量時oshizu(おしず)黏時放手,
おこまはグイッと、たいちを引き寄せて、
okoma(おこま)斯摎taichi(たいち)挷兼去,大聲喊:
「勝った!勝った!」
「贏咧!𠊎贏咧!」
と、大喜びです。
非常歡喜。
それを見て、おしずはワーッと泣き出してしまいました。
看著該,oshizu(おしず)哇聲噭出來。
それまで、黙って様子を見ていた越前守は、
在該恬恬看个越前守
「おしず。お前は負けるとわかっていて、なぜ手を離したのじゃ?」
「oshizu(おしず),你挷輸了,仰會放手哪?」
と、尋ねました。
問:
「・・・はい」
「...係。」
おしずは、泣きながら答えました。
oshizu(おしず)緊噭緊回答。
「たいちが、あんなに痛がって泣いているのを見ては、かわいそうで手を離さないではいられませんでした。
「看著taichi(たいち)痛著噭出來,恁衰過做毋得毋放手,
・・・お奉行さま。どうぞおこまさんに、たいちをいつまでもかわいがって、幸せにしてやるようにおっしゃってくださいまし」
...奉行大人,拜託你摎okoma(おこま)先生講,愛永久惜taichi(たいち),分佢幸福。」
「うむ、そうか」
「m11,係啊?」
越前守はやさしい目でうなずいてから、静かな声でおこまに言いました。
越前守用慈祥个眼神緊頷頭緊用平靜个聲音摎okoma(おこま)講:
「おこま、今のおしずの言葉を聞いたか?」
「okoma(おこま),頭下oshizu(おしず)講个話有聽著無?」
「はいはい、聞きました。」
「有、有,聽著咧。」
「もちろん、この子はわたしの子なのですから、おしずさんに言われるまでもありません。」
「當然,這係𠊎个倈仔,毋使oshizu(おしず)先生講。」
うーんと、かわいがってやりますとも。
それにわたしは人の息子をとりあげて、自分の子だなんていう大うそつきとは違いますからね。
總講,愛惜以外,強佔別人个倈仔,變做自家个倈仔,這就係講花撩呢。
だいたい、おしずさんは・・・」
大體,oshizu(おしず)...」
「だまれ!おこま!」
「莫講了!okoma(おこま)!」
越前守は、突然きびしい声で言いました。
越前守突然間嚴肅聲哨講:
「お前には、痛がって泣いているたいちの声が聞こえなかったのか!
「你啊,taichi(たいち)痛到會死噭个聲,聽毋著嘎!
ただ勝てばいいと思って、子どもの事などかまわずに手を引っぱったお前が、本当の親であるはずがない!
一心想愛贏,完全無考慮細人仔个事情,放勢挷,應該毋係正哀仔正著!
かわいそうで手を離したおしずこそ、たいちの本当の親じゃ。
どうだ、おこま!」
感覺衰過放手个oshizu(おしず)正是正哀仔,你試著仰般,okoma(おこま)!」
越前守の言葉に、おこまはまっ青になってガックリと手をつきました。
聽著越前守講个話,okoma(おこま)面壢青黏時伏落地泥:
「申し訳ございません!」
「失禮,請原諒!」
おこまは、自分がたいちを横取りしようとした事を白状しました。
okoma(おこま)供出自家想愛搶taichi(たいち)个事情。
「お母さん!」
「阿姆!」
「たいち!」
「taichi(たいち)!」
たいちは、おしずの胸に飛び込みました。
taichi(たいち)走過去揇oshizu(おしず)。
「お奉行さま、ありがとうございます。本当に、ありがとうございます」
「奉行大人,承蒙你,正經當承蒙你。」
おしずは越前守をおがむようにして、お礼を言いました。
oshizu(おしず)跪在越前守面前來感謝佢。
「うむ、これにて、一件落着!」
「m11,𠊎又辦好一件事!」
おしまい
煞咧
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