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12月17日の日本の昔話

青テングと赤テング

青テングと赤テング

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読

【大人も子供も眠れる睡眠朗読】★音質改善版★ ぐっすり眠れる日本昔話集 元NHKフリーアナ 読み聞かせ

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投稿者 「ちょこもち」  ちょこもち

♪音声配信(html5)
音声 ヤマネコギン

 むかしむかし、ある山のてっぺんに、とても仲の良い青いテングと赤いテングが住んでいました。
 青テングと赤テングはいつも山のてっペんから、人間たちのいる下界をながめています。

 ある日、赤テングが青テングに言いました。
「なあ、青テングよ。おれたちがこの山に来てから、何年になるかな?」
「そうだな、かれこれ五百年になるかな」
「五百年か。こうして下界の様子を見ていると、おもしろいように変わっていくが、おれたちはちっとも変わらんな」
「ふむ、人間どもは年がら年中、いつもいそがしくけんかをしているからな」
「うん? けんかをすると、変わるのか?」
「そりゃあ、そうだ。せっかくきれいな町をつくっても、人間どもはけんかをはじめて全部燃やしてしまう。そしてまたせっせと新しい町をつくっては、またけんかをして燃やしてしまう。まったく、あきずによくするもんだよ」
 それを聞いた赤テングは、手をたたいて言いました。
「そうか! おれたちも、けんかをしよう!」
「おいおい、突然どうしたんだ?」
「おれとお前は、一度もけんかをした事がないだろう。五百年もここにいるのに」
「まあな、おれたちは仲良しだから」
「それがだめなんだ。けんかをしないから、おれたちは進歩(しんぽ)がないんだ」
「そうかなあ? 仲良しなのは、良い事だと思うけどな」
「ともかく、今日からおれとお前は、けんかをしよう。いいか、けんかをしているんだから、しばらくは一緒に遊ばんぞ」
「うーん、なんだかよくわからんが。お前がそこまで言うなら」
 こうして青テングと赤テングは、はじめてのけんかをはじめたのです。
 その日から青テングと赤テングは別々の山で暮らすようになり、出来るだけ顔を合わさないようにしました。

 そんなある日、青テングが一人で下界をながめていると、お城の庭で何かがピカピカと光っていました。
「ん? あれはなんだろう? どうしてあんなに、光っているんだ?」
 気になった青テングは、自分の鼻をお城までのばしてみる事にしました。
「鼻、のびろー。鼻、のびろー。どんどんのびて、城へ行けー」

 さて、お城ではお姫さまの侍女たちが、お姫さまの着物を虫ぼしをしているさいちゅうでした。
「このお着物は、何て素晴らしいのでしょう。金や銀の糸がお日さまにキラキラとかがやいて、まるで宝石のようだわ」
「でもこれ以上は、ほすところがありませんわ。お着物はまだまだあるのに、どういたしましょう?」
 そこへ青テングの青い鼻が、スルスルとのびて来たのです。
「あら、ちょうどここに、青竹がありますわ。でも、ずいぶん長い青竹だこと」
 侍女たちは次から次へと、青テングの鼻に着物をほしました。
「なっ、なんだ? やけに鼻が重くなってきたな。何があったんだ? 鼻、ちぢまれー。鼻、ちぢまれー。ちぢんでちぢんで、元に戻れー」
 すると青テングの鼻は、色とりどりの着物をひっかけたままちぢんでいきました。
「あれえ! お姫さまのおめしものが!」
 侍女たちは大あわてですが、どうする事も出来ません。
 こうして青テングは、お姫さまのきれいな着物を手に入れる事が出来たのです。

 青テングがお姫さまの着物を着て喜んでいると、久しぶりに赤テングがやって来ました。
「おい、お前は何をおどっているのだ?」
 青テングは、きれいな着物を見せながら言いました。
「いいだろう。城に鼻をのばしたら、こんなにきれいな着物がついてきたんだ。欲しければ、お前にもわけてやるぞ」
「ふん、おれたちは今、けんかをしているんだぞ。だいたい、そんなチャラチャラした物なんているか!」
 赤テングはそう言って、自分の山へ帰って行きました。
 でも本当は、青テングの持っているお姫さまの着物がほしくてたまらなかったのです。
「いいなあ、青テングのやつ。けんかをしていなければ、あのきれいな着物がもらえたのに。・・・でも、城に鼻をのばすだけでいいのなら、おれにも出来る。よし、おれもやってみよう。鼻、のびろー。鼻、のびろー。どんどんのびて、城へ行けー」
 赤テングの赤い鼻が、スルスルとお城ヘのびていきました。

 そのころお城では、お殿さまが家来たちに武芸(ぶげい)のけいこをさせていました。
「気を抜くな! 敵国は、いつ攻めてくるかわからんぞ! 気合いを入れろ!」
 するとそこへ、赤テングの赤い鼻がのびて来ました。
「おや? なんだ、この赤い物は?」
「もしかして、敵国の新しい武器か?!」
「とにかく、切れ!」
 お殿さまの命令に、家来たちはいっせいに鼻へ切りかかりました。
 さあ突然鼻を切りつけられて、赤テングはびっくりです。
「ウギャアー! 痛い、痛い!」
 かわいそうに赤テングは、テングのじまんである鼻をボロボロにされてしまいました。
 赤テングがションボリ岩にすわっていると、青テングがやって来ました。
「おーい、赤テング、元気か? ・・・おい! どうしたんだ、その鼻は?!」
「いいから、ほっといてくれ。おれたちは、けんかをしているんだから」
「そうはいかないよ。おれたちは、友だちだろう。さあ、見せてみろ。・・・ああ、これはひどいきずだ。でも心配するな、けがに良く効くカッパのぬり薬を持って来てやるからな。それに、きれいな着物も半分やるよ」
 青テングのやさしい言葉に、赤テングは泣き出してしまいました。

 これがきっかけで赤テングはけんかをやめて、青テングとまた仲良く暮らすようになりました。

おしまい

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