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7月13日の日本民話 2
忍術使いの泥棒
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むかしむかし、京の三角、江戸の三角、越後(えちご→新潟県)の三角と呼ばれる、三人の泥棒がいました。
この三人は京都や江戸や越後の国で、それぞれに一番と言われる泥棒たちです。
ある日の事、この三人の泥棒が集まって、大商人として有名な鴻池(こうのいけ)の長者のお屋敷に忍び込むことにしたのです。
ところが、さすがは大金持ちの鴻池です。
屋敷の中には若くて強そうな男たちが大勢いて、三人は何も盗み出さないうちに捕まってしまいました。
「わしらはまだ何も盗んでいません。どうか、かんべんしてください」
三人の泥棒は、両手を合わせて謝りました。
すると、主人の鴻池の長者が出て来て言いました。
「いいや、人が汗水たらしてかせいだ金を盗む様な奴は、かんべん出来ない。・・・おい、早くこいつらを、役人のところへ連れて行け」
「ま、待ってください」
京の三角が、鴻池の長者に言いました。
「役人のところへ連れて行かれる前に、面白い芸を見せましょう」
「面白い芸だと」
鴻池の長者は、泥棒たちがどんな芸をするのか見たくなりました。
「よし、芸を見てやろう。ただし、逃げようなんて考えてもむだだぞ」
「逃げるなんて、とんでもない。それより、竹ざおを一本貸して下さい」
京の三角が竹ざおを庭に立てると、その横に江戸の三角と越後の三角が並びました。
「それでは、わしらの芸をお目にかけましょう」
京の三角が、何やら呪文を唱え始めました。
すると不思議な事に、京の三角はたちまちとんびになって飛び上がり、竹ざおのてっぺんに止まったのです。
「何と!」
鴻池の長者も若い男たちも、びっくりして口を開けたままです。
すると今度は、江戸の三角が呪文を唱えました。
すると江戸の三角はネズミに変身して、ちょこちょこと走り回りました。
「何とも、不思議な!」
鴻池の長者も若い男たちも、まるで夢を見ているような気持ちです。
続いて越後の三角が呪文を唱えると、越後の三角は小さな豆粒に変身しました。
「おおっ、今度は豆粒だ!」
みんなが驚いている前でネズミは豆粒をくわえると、するするっと竹ざおを登っていきました。
するととんびがネズミの尻尾をくわえて、さっと空へ飛び立ちました。
その時、ネズミの口の中の豆粒が言いました。
「それではみなさん、さようなら」
やがてとんびはぐんぐん空へ登っていき、とうとう見えなくなってしまいました。
おしまい
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