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9月30日の日本民話 2
カッパと和尚 9月30日
秋田県の民話 → 秋田県情報
秋田県の雄物川(おものがわ)に住むカッパは、むかしから、
「四月にまいたソバの茎がのびて赤くなる頃から、まっ白な花が咲く九月末まで川にいる」
と、言われています。
カッパたちは夏から秋にかけて川へ水遊びにくる子どもたちを襲っては、人間のおしりにあるという、大好物のしりこ玉を抜いたりするのです。
さて、ある年の九月三十日、川のカッパはみんな暖かい土地へ移っていったのに、一匹のカッパだけが遊びほうけて残っていました。
秋田は雪国ですから、冬が近づくと突然に天候がかわります。
その日は急にあられが降ってきて、カッパの頭の上にあるお皿にカチンカチンと当たりました。
「痛い! 痛いよう!」
カッパは弱点のお皿を両手で頭をおおいながら、きょろきょろあたりを見まわすと、むこうにお寺のハス沼が見えました。
カッパは走っていって頭から飛び込むと、ハスの葉っぱの下にもぐり込みました。
ところが、この沼はハスの茎だらけで、泳ぐ事が出来ません。
「弱ったなあ。どこかに、もっと広いところはねえのか?」
ハスの葉っぱの間から顔を出して見ていると、お寺の和尚さんに見つかってしまいました。
「おや? カッパでねえか。なんでこんな沼などにおるんじゃ。これから寒い冬がきて、この沼だって凍ってしまうぞ。どうしてみんなと一緒に、暖かいところへ行かなかった?」
「・・・・・・」
「まあ、よい。困ったら、いつでも寺へ来なさい」
和尚さんはそういって、去っていきました。
それから何日かすると、沼の水はだんだん冷たくなってきました。
「ああー、寒い、寒い。今からでも、仲間が行った暖かい土地へ行こう」
決心したカッパはハス沼を飛び出すと、震えながら歩き出しましたが、あまりの寒さに体が動かず、その場にうずくまってしまいました。
やがて、お寺の和尚さんが外出から帰ってきた時、カッパはこの冬はじめて降った雪の中で死んでいました。
「おう、おう、かわいそうに」
和尚さんはあわれんで、夏になるとカッパたちが遊んでいる雄物川の淵が見える山の上に、カッパのお墓をつくってやりました。
「カッパや。また来年、ソバの茎が赤くなる頃、お前の仲間たちがあそこに集まってくる。ここなら、よく見えるだろう」
和尚さんがカッパのお墓をたててから、この近くではカッパにいたずらをされる子どもは、まったくいなくなったという事です。
おしまい
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