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2月29日の世界の昔話
ものを言う鍋
デンマークの昔話 → デンマークの国情報
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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
【大人も子どもも聴くだけで眠れる】面白くて不思議な話 180分広告なし
むかしむかし、お金に困った貧乏なお百姓夫婦が、大切なメスウシを売る事にしました。
お百姓がメスウシを連れて町へ行くと、ある町角で一人の男に出会いました。
「これは良いウシですね。どうです、このナベと取り替えませんか?」
「と、とんでもない。わしはお金が欲しいのです。こんな汚い鍋なんかもらっても」
その時、鍋が突然しゃべりました。
「いいから、わたしをもらっておけ。絶対に良い事があるから」
そこでお百姓は、メスウシと鍋を取り替えて家に帰りました。
それを知ったおかみさんは、カンカンになって怒り出しました。
「あんたは、何を考えているの! こんな鍋なんか、何の価値もないじゃないの!」
「しかし、この鍋はしゃべるんだよ」
「鍋がしゃべる? うそをおっしゃい!」
するとその時、鍋が歌う様にしゃベり出しました。
「おかみさん。わたしをきれいにしておくれ。そして火にかけておくれ」
「おや? 本当に鍋がしゃべったよ。確かにこれは、役に立ちそうだね」
機嫌を治したおかみさんは、すぐにナベをピカピカに磨いて火にかけました。
するとナベは、ピョンと火から飛び降りて、
「飛んでく、跳ねてく、金持ちさんちへ」
と言いながら、ピョンピョン家を出て行きました。
その頃、金持ちの家では奥さんがプリンを作ろうとしていました。
そこへ鍋が飛び込んで来たので、奥さんは、
「これはプリンを作るのに、ちょうど良い大きさの鍋だわ」
と、材料を鍋に入れて、火の上にかけました。
すると鍋は、ピョンと火から飛び降りて、
「飛んでく、跳ねてく、お百姓の家へ」
と言いながら、ピョンピョン帰って行きました。
こうしてお百姓さん夫婦は、鍋のおかげでおいしいプリンをお腹一杯食ベる事が出来ました。
さて次の朝、鍋はまた、
「飛んでく、跳ねてく、金持ちさんちへ」
と、家を飛び出して、また金持ちの家へやって来ました。
金持ちの家では、お手伝いの人たちが納屋(なや)で麦を叩いていましたが、そこへ鍋がやって来たので、
「これは麦を入れるのに、ちょうど良い大きさだ」
と、一袋の麦を鍋に入れました。
ところが鍋は、なかなか一杯になりません。
そして麦をどんどん入れていくうちに、納屋にあった麦が全部入ってしまいました。
すると鍋は、
「飛んでく、跳ねてく、お百姓の家へ」
と言いながら、ピョンピョン帰って行きました。
お百姓夫婦は、鍋が運んで来た麦を見て大喜びです。
「ありがたい。これだけあれば何年も麦に困らないぞ」
さて三日目の朝、また鍋は、
「飛んでく、跳ねてく、金持ちさんちへ」
と言って、、またまた金持ちの家に行きました。
金持ちの家では、主人が金貨を数えていました。
そこへ鍋が飛び込んで来たので、
「これは金貨をしまっておくのに、ちょうど良い大きさだ」
と、主人はさっそくテーブルの上の金貨を鍋に入れて、戸棚にしまおうとしました。
すると鍋は、するりと抜け出して、
「飛んでく、跳ねてく、お百姓の家へ」
と言いながら、ピョンピョン帰って行きました。
お百姓夫婦は、金貨を見てビックリ。
「これだけあれば、一生楽に暮らせるわ」
お百姓夫婦は鍋をていねいに磨いて、棚にしまいました。
さて次の日も、鍋は金持ちの家へ行きました。
すると、それを見つけた主人は、
「この魔法の鍋め。プリンと麦と大事な金貨を、一つ残らず返せ!」
と、鍋に飛びつきました。
すると不思議な事に、鍋は主人の体にピッタリとくっついてしまったのです。
主人がいくら暴れても、鍋は離れません。
鍋が、言いました。
「飛んでく、跳ねてく」
「ええーい。どこへでも飛んで行け!」
「分かった」
そこで鍋は金持ちの主人をくっつけたまま、遠くへ遠くへ飛んで行ってしまい、二度と帰っては来ませんでした。
おしまい
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