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2年生の日本昔話(にほんむかしばなし)
カッパのきず薬(ぐすり)
むかし、武田信玄(たけだしんげん)の家来(けらい)に、主水頭守清(もんどのかみもりきよ)という医者(いしゃ)がいました。
あるとき、ウマに乗(の)って川を渡(わた)っていたら、ウマが途中(とちゅう)で動(うご)きません。
「はて?」
守清(もりきよ)が下を見ると、川の中から黄色(きいろ)の長(なが)い腕(うで)がニューッとのびていて、ウマの足をしっかりとにぎっているのです。
「その手をはなせ!」
守清(もりきよ)が、どなりました。
それでもはなそうとしないので、腰(こし)の刀(かたな)をぬき、その腕(うで)を切(き)りおとしました。
動(うご)けるようになったウマは、いきおいよく川を渡(わた)り、むこう岸(ぎし)につきました。
ところが、ウマの足には、まだ腕(うで)がくっついたままです。
ウマからおりてよく見てみたら、どうやらカッパの腕(うで)のようです。
守清(もりきよ)はビックリするどころか、ひどく喜(よろこ)んで、
「これは、めずらしいものを手に入れたぞ」
と、その腕(うで)をウマの足からはずして、家(いえ)へ持(も)ちかえりました。
さて、その晩(ばん)のこと。
守清(もりきよ)が寝(ね)ようとしていたら、こっそり部屋(へや)にやってきた者(もの)がいます。
「なに者(もの)だ。名を名のれ!」
守清(もりきよ)は、枕(まくら)もとの刀(かたな)をつかむと。
「カッパです」
「なに、カッパだと」
守清(もりきよ)が明(あ)かりをつけると、なるほど、一方(いっぽう)の腕(うで)をなくしたカッパがすわっています。
「なに用(よう)だ!」
「はい、じつは、わたしの腕(うで)を返(かえ)してもらいに来(き)ました。もう二度(にど)とウマの足を引(ひ)っぱったりしませんから、どうか腕(うで)をお返(かえ)しください」
「とんでもない。なんなら、その残(のこ)った腕(うで)も、切(き)りおとしてやろうか?」
「そればかりは、おゆるしください。もし腕(うで)を返(かえ)してくださるのなら、日本一よくきく、きず薬(ぐすり)のつくり方(かた)を教(おし)えましょう。これがわたしのつくった薬(くすり)です」
カッパは、貝がらに入った薬(くすり)を見せました。
「ならば、この場(ば)で腕(うで)をくっつけて見せろ。できるか?」
「おやすいこと」
守清(もりきよ)が、切(き)りおとしたカッパの腕(うで)を手渡(てわた)すと、カッパはその切り口(きりくち)に貝がらの薬(くすり)をたっぷりとつけ、もとのようにくっつけてしまい、腕(うで)をグルグルとまわしてみせました。
きずぐちを見てみると、もはや、きずあともありません。
「なるほど、よくきくものじゃ。ひとつ、そのつくり方(かた)を教(おし)えてもらおうか」
「はい」
カッパは、薬(くすり)のつくり方(かた)を、こまかく話(はな)しました。
守清(もりきよ)は、それを忘(わす)れまいと、しっかり頭(あたま)にたたきこみました。
すっかりうれしくなった、守清(もりきよ)が、
「ところでカッパ、いっしょに酒(さけ)でも飲(の)まんか」
と、いって、酒(さけ)をとりに行(い)こうとしたとたん、ハッと目がさめました。
「なんだ、いまのは夢(ゆめ)だったのか?」
あわてて床の間(とこのま)を見たら、そこへおいておいたはずのカッパの腕(うで)がありません。
「そんな、ばかな」
守清(もりきよ)はビックリしてとび起(お)き、縁側(えんがわ)へ出ました。
すると、そこには、水がこぼれていて、もみじの形(かたち)をしたカッパの足跡(あしあと)が、てんてんと、ついています。
次(つぎ)の日、守清(もりきよ)はカッパに教(おそ)わったとおりの薬(くすり)をつくって、信玄(しんげん)のいる館(やかた)へ行(い)きました。
そして、けがをしているさむらいたちに、この薬(くすり)をつけてみると、どうでしょう。
何日(なんにち)も苦(くる)しんでいた痛(いた)みが、うそのようにとれて、きず口もたちまちふさがりました。
「なるほど、こいつはよくきくわい」
そこで守清(もりきよ)は、信玄(しんげん)の家来(けらい)をやめて薬屋(くすりや)になり、この薬(くすり)に『カッパのきず薬(ぐすり)』という名前(なまえ)をつけて、売(う)りだしたのです。
よくきく『カッパのきず薬(ぐすり)』の評判(ひょうばん)は、たちまち広(ひろ)まり、けがをした人が、全国(ぜんこく)から買(か)いに来(く)るようになりました。
おかけで店(みせ)はどんどん大きくなり、守清(もりきよ)がなくなったあとも、書き残(かきのこ)された薬(くすり)のつくり方(かた)によって、店(みせ)は何代(なんだい)にもわたってはんじょうしたそうです。
おしまい
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