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2年生の日本昔話(にほんむかしばなし)
三枚(さんまい)のお札(ふだ)
むかしむかし、ある山寺(やまでら)の小坊主(こぼうず)が、クリ拾(ひろ)いに行(い)きたくなりました。
「和尚(おしょう)さん、山へクリ拾(ひろ)いにいっても、いいですか?」
小坊主(こぼうず)が聞(き)くと、和尚(おしょう)さんは答(こた)えました。
「クリ拾(ひろ)いか。しかし、山には鬼(おに)ババが出るぞ」
「でも・・・」
小坊主(こぼうず)が、どうしても行(い)きたいと、だだをこねるので、しかたなく、和尚(おしょう)さんは三枚(さんまい)のお札(ふだ)を渡(わた)して、
「こまったことがあったら、このお札(ふだ)に、願(ねが)いをかけなさい。きっと、おまえをたすけてくれるじゃろう」
そういって、小坊主(こぼうず)を送り出(おくりだ)しました。
小坊主(こぼうず)は山に入ると、あるわあるわ、大きなクリがたくさん、落(お)ちています。
小坊主(こぼうず)が、夢中(むちゅう)でクリ拾(ひろ)いにはげんでいると、とつぜん目の前(まえ)に、鬼(おに)ババが現(あらわ)れました。
「うまそうな坊主(ぼうず)じゃ。家(いえ)に帰(かえ)って食(く)ってやろう」
小坊主(こぼうず)は、身(み)がすくんでしまい、さけぶことも、逃げ出(にげだ)すこともできません。
そしてそのまま、鬼(おに)ババの家(いえ)へ、連(つ)れていかれました。
恐(おそ)ろしさのあまり、小さくなっていますと、鬼(おに)ババはキバをむいて大きな口をあけました。
(たっ、大変(たいへん)だ。食(く)われてしまうぞ)
小坊主(こぼうず)はそう思(おも)うと、とっさに、
「ウンチがしたい!」
と、いいました。
「なに、ウンチだと。・・・うむ、あれはくさくてまずいからな。仕方(しかた)ない、はやく行(い)って出してこい」
鬼(おに)ババは、小坊主(こぼうず)の腰(こし)になわをつけて、便所(べんじょ)にいかせてくれました。
中に入ると、小坊主(こぼうず)はさっそくなわをほどき、それを柱(はしら)に結(むす)びつけると、お札(ふだ)をはりつけ、
「お札(ふだ)さん。おれのかわりに、返事(へんじ)をしてくれ」
そういいつけると、窓(まど)から逃げ出(にげだ)しました。
「坊主(ぼうず)、ウンチはまだか?」
すると、お札(ふだ)が答(こた)えました。
「もう少(すこ)し、もう少(すこ)し」
しばらくして、鬼(おに)ババがまた聞(き)きました。
「坊主(ぼうず)、ウンチはまだか?」
「もう少(すこ)し、もう少(すこ)し」
またしばらくして、鬼(おに)ババが聞(き)きましたが、
「もう少(すこ)し、もう少(すこ)し」
と、同(おな)じことをいうので、
「もうガマンできん! 早く出ろ!」
と、言(い)って、便所(べんじょ)のとびらを開(あ)けてみますと、中は空っぽです。
「ぬぬっ! よくもいっぱい、食(く)わせたな。待(ま)てえ!」
さけびながら鬼(おに)ババは、夜道(よみち)を走(はし)る小坊主(こぼうず)を追(お)いかけていきました。
それを知(し)った小坊主(こぼうず)は、二枚(にまい)めの札(ふだ)を取り出(とりだ)しますと、
「川になれ!」
と、言(い)って、後(うし)ろに投(な)げました。
すると、後(うし)ろに川が現(あらわ)れ、鬼(おに)ババは流(なが)されそうになりました。
けれど鬼(おに)ババは、ガブガブと川の水をぜんぶ飲(の)みほすと、また追(お)いかけてきます。
小坊主(こぼうず)は、三枚(さんまい)めの札(ふだ)を出すと、
「山火事(やまかじ)になれ!」
と、いって、投(な)げつけました。
すると、後(うし)ろで山火事(やまかじ)がおきて、鬼(おに)ババをとおせんぼうしましたが、鬼(おに)ババは、さっきのんだ川の水をはき出すと、またたくまに、山火事(やまかじ)を消(け)してしまいました。
鬼(おに)ババは、また追(お)いかけてきます。
小坊主(こぼうず)は命(いのち)からがら、お寺(てら)にたどりつくと、和尚(おしょう)さんに助(たす)けを求(もと)めました。
「だから、やめておけといったのじゃ。まあ、まかせておけ」
和尚(おしょう)さんは小坊主(こぼうず)を後(うし)ろにかくすと、追(お)いかけてきた鬼(おに)ババにいいました。
「鬼(おに)ババよ。わしの頼(たの)みを一つきいてくれたら、坊主(ぼうず)をおまえにやるが、どうだ」
と、持(も)ちかけました。
「いいだろう。何(なに)がのぞみだ」
「聞(き)くところによると、お前(まえ)は、山のように大きくなることも、豆粒(まめつぶ)のように小さくなることもできるそうだな」
「ああ、そうだ」
「よし、では豆粒(まめつぶ)のように、小さくなってくれや」
「おやすいご用(よう)」
鬼(おに)ババは答(こた)えて、からだを小さくすると、豆粒(まめつぶ)のようになりました。
和尚(おしょう)さんはそのときすかさず、鬼(おに)ババをもちの中に丸め込(まるめこ)むと、一口で飲(の)みこんでしまいました。
「おほほほっ。ざっと、こんなもんじゃい。・・・うん、腹(はら)がいたいな。ちと、便所(べんじょ)に」
和尚(おしょう)さんは、おなかが痛(いた)くなったので、便所(べんじょ)にいきますと、ウンチの中から、たくさんのハエが飛び出(とびだ)してきました。
ハエは、鬼(おに)ババが生まれ変(うまれか)わって、日本じゅうにふえていったものだそうです。
おしまい
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