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3年生の日本民話(にほんみんわ)
与作(よさく)のうらない
香川県(かがわけん)の民話(みんわ)
むかしむかし、あるところに、与作(よさく)という、お百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
とても働き者(はたらきもの)で、毎日朝早くから夜おそくまで、畑仕事(はたけしごと)をしていました。
ところが与作(よさく)さんのおかみさんときたら、ひどいなまけ者(もの)で、しかも大めし食いです。
そのくせ、与作(よさく)さんの前では、少ししかごはんを食べません。
(しかし、あんまりごはんを食べないのに、どうしてふとっているのかな?)
不思議(ふしぎ)に思った与作(よさく)は、ある日、畑(はたけ)へ行くふりをして、天井(てんじょう)にかくれました。
すると、どうでしょう。
おかみさんはごはんをたいて、にぎりめしをたくさん作り始めました。
(なんて数だ。あんなににぎりめしをつくって、どうするつもりだ?)
と、見ていると、つくったばかりのにぎりめしをパクパク食べて、残(のこ)りをカゴに入れて、かまどの後ろへかくしたのです。
(なるほど、ああやってひまさえあれば、にぎりめしを食べているんだな)
そこで与作(よさく)は天井(てんじょう)からおりて、なにくわぬ顔で家に入りました。
「えっ、まあまあ、今日はどうしたの? ばかに帰りが早いじゃないの」
おかみさんが、おどろいて言いました。
「おら、今日はうらないをならってきた」
「へえ、うらないをね。そんなら、なにかうらなっておくれよ」
すると与作(よさく)は両手(りょうて)を組んで、目をつぶって言いました。
「うむ。にぎりめしが見える。・・・ふむふむ、かまどの後ろだ。かまどの後ろに、にぎりめしがかくしてあるぞ」
「まあ、すごい!」
おかみさんは、自分のことを言われているのに、すっかり感心(かんしん)してしまいました。
そしてすぐに家を飛び出(とびだ)して、この事(こと)を村のみんなにいいふらしたのです。
さて、与作(よさく)の近所(きんじょ)に、おばあさんとお嫁(よめ)さんのなかの悪(わる)い家がありました。
ある日の事(こと)、お嫁(よめ)さんはおばあさんがにくくて、おばあさんの大切なカガミを古井戸(ふるいど)のつるべの中にかくしてしまいました。
そして、与作(よさく)のうわさを聞いたおばあさんが、やって来ました。
「与作(よさく)さん、わしのカガミがなくなったんよ。どこにあるのかうらなっておくれ」
そんな事(こと)を言われたって、与作(よさく)にわかるはずがありません。
そこで、しかたなく、
「今日はもうおそい。明日になったら、うらなってあげよう」
と、言って、おばあさんを帰しました。
すると間もなく、お嫁(よめ)さんがやって来ました。
「与作(よさく)さんはうらないの名人なので、もう知っていると思いますが、じつはわたしが、古井戸(ふるいど)のつるべの中にかくしました。その事(こと)がわかれば、おばあさんに追い出(おいだ)されてしまいます。どうか、おばあさんにはわたしがかくしたと言わないでください」
「おおっ、そうかい、そうかい。それを聞いて助(たす)かった。・・・いや、よくぞ言ってくれた。もしお前さんが白状(はくじょう)しなければ、わしはおばあさんに全(すべ)てを話していたところだ。約束(やくそく)しよう、この事(こと)は、決(けっ)して話しはしないから」
「あっ、ありがとうございます」
次(つぎ)の日、与作(よさく)はおばあさんに言いました。
「実(じつ)はな、カガミは古井戸(ふるいど)のつるべの中にある。子どもがイタズラをして、かくしたのだ」
おばあさんが古井戸(ふるいど)のつるべをあげてみると、本当にカガミがありました。
「あれまあ。なんてよくあたるうらないだろう」
おばあさんは、この事(こと)を村中にふれて歩きました。
与作(よさく)さんのうわさはたちまち広がり、ついに殿(との)さまの耳にまで聞こえました。
ちょうど大切な刀が見つからなくなり、こまっていた殿(との)さまは、すぐに与作(よさく)のところへ使(つか)いをやり、
「刀のゆくえを、うらないに来い」
と、言ったのです。
「こいつは弱った。いまさら、うらないは出来ないとは言えないし・・・」
それでもかくごを決(き)めて、殿(との)さまの屋敷(やしき)へ出かけていきました。
すると途中(とちゅう)の森で、二匹(2ひき)のキツネがけんかをしていました。
「あの刀は、おれがぬすんだものだぞ」
「だが、ぬすんだのはお前でも、屋敷(やしき)の庭(にわ)にかくしたのはおれだ」
与作(よさく)さんはそれを聞くと、飛び上(とびあ)がって喜(よろこ)びました。
そこで殿(との)さまの前に行くと、与作(よさく)は両手(りょうて)を組んで、目をつむって言いました。
「むむっ、むむむっ。・・・はい、わかった。刀は、屋敷(やしき)の庭(にわ)にあります」
殿(との)さまがけらいに調(しら)べさせると、庭石(にわいし)の間から、なくなった刀が出て来たのです。
「これは見事(みごと)。お前は日本一のうらない名人だ」
殿(との)さまは大喜(おおよろこ)びで、与作(よさく)にたくさんのほうびをあげたという事(こと)です。
おしまい
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