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1月24日の日本民話
  
  
  
  源治のタヌキ石
  三重県の民話 → 三重県情報
 むかしむかし、百姓(ひゃくしょう)の源治(げんじ)の庭に、大きな石がありました。
   この石は大変重たいので、二、三人で力を合わせないとビクともしませんが、時には一人でも軽々と運べるという、不思議な石です。
   ある日の事、源治がこの石の上に腰をかけてひと休みしていると、その石がしゃべったのです。
  「源(げん)さん、源さん、わしをこの庭にいつまでも置いておくれよ」
   それを聞いた源治は、気味がわるくなって
  (こんなうす気味わるい石は河原(かわら)にでもほおってやるか、それともどこかの石と交換(こうかん)してもらおうか)
  と、考えました。
   源治はとなり村の石屋(いしや)の岩八(いわはち)のところへ行って、
  「岩八さん、わしの家の庭に大きな石があるが、引きとってくれんかね?」
  と、いいました。
   岩八はすぐに、源治の家に行きその石を見に来ました。
  「おや、一人で来たのかい? この石はとても一人や二人で持てませんよ」
  と、源治がいいますと、岩八は
  「どれどれ」
  と、ためしに押してみると、石は簡単に動きました。
  「見かけによらず軽い石だな。こんな石なら、わし一人でも大丈夫だ」
  と、いって持ち上げようとすると、今度はビクともしません。
   それで三人の石屋を連れて来て、運んで行くことにしました。
  「今度はもっと美しい石をかわりに持って来るから、楽しみにな」
  と、いって岩八は帰って行こうとすると、その石が、
  「源治の庭へ帰してくれ!」
  と、大声でさけんだのです。
  「ウヒャー! 石がしゃべった!」
 岩八はおどろいて、石をもとのところへ運び返したという事です。
おしまい