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5月16日の日本民話
  
  
  
  もちはこわい
  山梨県の民話 → 山梨県情報
 むかしむかし、ある山の村のむこさんが、はじめて山をおりて嫁さんの家へ行きました。
   嫁さんの家では、むこさんにごちそうしてやろうと、おもちをつきはじめました。
   するとそこへ、近所の家の小さい子どもがやってきたので、家の人が、
  「これはこわい物だ、あぶないから、あっちへいっていろ」
  と、いったのです。
   それを見ていたむこさんは、おもちが本当にこわいものだと思いました。
  「さ、できた。遠慮しないで、どんどん召し上がってください」
   そういって、おかみさんがお皿に乗せて持ってきたものは、おもちをあんこでくるんだぼたもちでした。
   それを見たむこさんは、
  (やや、なんてまっ黒いものなんだ。これはきっとバケモノにちがいない)
  と、思って、ガタガタとふるえたまま食べないでいました。
   するとおかみさんは、むこさんがお腹いっぱいなのだと思い、帰るときにそのぼたもちをふろしきにつつんで、お土産に持たしてくれました。
   むこさんはそのぼたもちをつつんだふろしきがこわくて、長い竹ざおをひろうと、その竹ざおのさきにふろしきをぶら下げてかえることにしました。
   ところが、だんだんとふろしきが下へおりてきて、むこさんの背中にペタリとぶつかったのです。
  「ウヒャーーーァ! まっ黒のバケモノが背中にかみついた!」
   むこさんは竹ざおを投げ捨てて、ふろしきからこぼれだした一つをふみつけました。
   すると中から、白いおもちが出てきました。
   それを見たむこさんは、よけいにビックリして、
  「バケモノが、歯をむいてきただ!」
と、言って、そのまま家まで逃げ帰ったという事です。
おしまい