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4年生の日本民話(にほんみんわ)
コウノトリの恩(おん)がえし
鹿児島県(かごしまけん)の民話(みんわ)
むかしむかし、ある村の橋の下に、ほったて小屋をつくってくらしている、母と息子がいました。
息子は、少しばかりの塩(しお)を仕入れて、売り歩いていました。
ある年の暮(く)れの事です。
息子が塩(しお)を仕入れて町からもどってくると、田んぼで殿(との)さまがしかけたかすみアミにコウノトリがかかって、バタバタとあばれていました。
「なんと。コウノトリじゃないか。年の暮(く)れだというのに、かわいそうに」
息子は、コウノトリをはなしてやりました。
そして橋のところまで帰ってきたとき、つい土手(どて)の石につまずいて、塩(しお)をばらまいてしまったのです。
橋の下から、それを見ていた母親は、
「また、けつまずいたのか。ああ、塩(しお)がもったいない。あの石はあぶないから足元に気をつけろって、何度もいっておったのに」
と、あきれ顔でいいました。
これで、今日は仕事にいけません。
仕事に行けないので食べる物が買えず、母と息子はだまって、お湯ばかりのんでいました。
ところがしばらくすると、ほったて小屋へ美しい娘(むすめ)がたずねてきたのです。
「あんたみたいな美しい娘(むすめ)さんが、わしら貧乏人(びんぼうにん)に、何の用だね?」
母親がたずねると、娘(むすめ)はまじめな顔で、
「はい。嫁(よめ)にしてもらおうと思ってきました」
と、いうのです。
「な、なにをいう。うちには食う物も家もない。お前のような娘(むすめ)を嫁(よめ)にもらえねえ。わるいが帰っておくれ」
と、母親はことわりました。
「お金なら、少しは持っております。お願(ねが)いですから、嫁(よめ)にしてください」
美しい娘(むすめ)は、ふところからお金を出しました。
「・・・しかし」
「お願(ねが)いです。嫁(よめ)にしてください」
「・・・だけれど」
「お願(ねが)いです。嫁(よめ)にしてください」
「・・・・・・」
母親はことわれなくなって、娘(むすめ)を息子の嫁(よめ)さんにすることにしました。
すると次の日の朝早く、いかめしい侍(さむらい)たちがやってきました。
殿(との)さまがとらえようとしたコウノトリを逃(に)がした罪(つみ)で、十両(じゅうりょう→やく七十まんえん)の罰金(ばっきん)をはらわなければ、息子の命はないと、きびしくいわれたのです。
「お前がコウノトリを逃(に)がしたなんて、知らんかった。なんということをしたんじゃ。十両もの大金は、一生かかってもできんぞ。ああ、どうしたらいいんじゃ」
母親は泣(な)きくずれると、嫁(よめ)さんは夫(おっと)にむかっていいました。
「あなたが何度もつまずいて塩(しお)をばらまいた石を、どけてみなされ」
息子はすぐに土手の石のところへ走っていくと、土をほって石をどけてみました。
すると、大きな石はふたになっていて、その下には大判小判(おおばんこばん)がいっぱいうまっていたのです。
そのお金で、息子はすぐに罰金(ばっきん)をはらいました。
ところが晴れて息子の命がすくわれると、嫁(よめ)さんは町へ買いものにいくといったまま、姿(すがた)を消してしまったのです。
「あの娘(むすめ)は、お前が助けたコウノトリだったんだな。恩(おん)をかえしに嫁(よめ)にきたんだな」
母と息子は、うなずきあいました。
こうして大金持ちになったこの親子が、のちに大阪(おおさか)へ出てきて、
「難波(なにわ)の長者(ちょうじゃ)」
と、いわれた大商人、鴻池(こうのいけ)のはじまりになったという事です。
おしまい
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