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1月11日の世界の昔話

コウノトリになった王さま

コウノトリになった王さま
ハウフの童話 → ハウフの詳細

 むかしむかし、バクダッドの王さまが、商人から小さな箱を買いました。
 箱の中には、黒い粉が入っていて、その粉をかいで「ムタボール」というと、どんな動物にも変わることができるし、その動物のことばもわかるというのです。
 人間にもどりたいときは、東へ向かって三ベんおじぎをして「ムタボール」と、いえばいいのです。
 だけど、一つ注意しなくてはいけません。
 それは、動物になっているときは、ぜったいに笑ってはいけないのです。
 もし笑ったりすると、おまじないのことばを忘れてしまって、ずっと動物のままでいなければならないのです。
 王さまは、さっそくためしたくなりました。
 そこで、大臣(だいじん)を誘って出かけました。
 ふたりが池のほとりにやってくると、二羽のコウノトリ(→詳細)が、なにやら話をしています。
 それを見た王さまは、さっそく大臣といっしょに小箱の粉のにおいをかいで「ムタボール」と、となえました。
 すると、ふたりはあっというまにコウノトリになってしまいました。
 コウノトリになってみると、二羽のコウノトリの話していることがよくわかりました。
 それは、ほんの世間話でしたが、コウノトリがまるで人間みたいなことをいっているので、王さまと大臣は思わず笑ってしまったのです。
 さあ、たいへん。
 ふたりは、人間にもどるおまじないのことばを忘れてしまいました。
 ふたりがコウノトリになってしまって四日ばかりたつと、新しい王さまが王の位についてしまいました。
 それは、魔法使いカシュヌールの息子です。
 じつは、王さまたちを魔法にかけたのは力シュヌールだったのです。
 コウノトリになった王さまは、くやしがって大臣といっしょに飛んでいきました。
 そして日が暮れたので、ふたりは人のいない、古いお城で寝ることにしました。
 ところが、そこには一羽のフクロウ(→詳細)がいて、悲しそうに鳴いていました。
 そのフクロウは、実は元インドのお姫さまだったのです。
 あるとき、魔法使いカシュヌールが息子のお嫁になってくれといいましたが、お姫さまはことわりました。
 すると力シュヌールはおこって、お姫さまをフクロウにしてしまったのです。
「おまえは、おまえをお嫁にほしいという者があらわれるまで、そうやってみにくい姿でいるがいい。まあ、フクロウをお嫁にほしいという者など、どこにもいないだろうがな」
 かわいそうなお姫さまは、毎日、泣いて暮らしていたというわけです。
「わたしたちをふしあわせにしたカシュヌールは、毎月一度、このお城ヘやってきます。仲間とお酒を飲みながら、お互いに自分たちのした悪いことを自慢しあうのです。だから、もシカするとそのときに、あなたがたの忘れたおまじないのことばも口に出すかもしれません。今夜が集まる日なのです」
と、フクロウのお姫さまがいいました。
 やがて、魔法使いたちが集まって酒盛りが始まりました。
 カシュヌールは、王さまたちをコウノトリにしたことを自慢しました。
 そして、そのおまじないのことばをしゃべったのです。
 王さまは、それを聞いて喜びました。
「ありがとう、フクロウさん。おかげでわたしたちは人間にもどれます。フクロウでもかまいません。どうか、わたしのお嫁になってください」
 王さまは大臣といっしょに東へ向かって三ベんおじぎをして、「ムタボール」とさけびました。
 すると、ふたりは無事に元の姿にもどりました。
 ところが、ふたりのそばに美しいお姫さまが立っているではありませんか。
「わたしはフクロウです。王さまがお嫁にしてくれるといったので、魔法がとけたのです。ありがとうございます」
 そこで三人はバクダッドに帰って、りっぱな国をつくったということです。

おしまい

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