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5年生の世界昔話
魔法(まほう)のあみぼう
チェコの昔話 → チェコのせつめい
むかしむかし、あるところに、ミリダという、青い目とあまいろのおさげ髪(かみ)をもった娘(むすめ)がいました。
ミリダが十六才になった年のこと、七人の強盗(ごうとう)がおそってきて、お父さんとお母さんは殺されて家を焼かれてしまいました。
びんぼうな、みなし子となったミリダは、ある店の女中(じょちゅう)にやとわれました。
どんな寒い日でも、はくクツ下がありません。
たべるものと言えば、一日にほんの少しのパンの耳と、スープひと皿だけでした。
ですからミリダは、いつも寒くひもじい思いをしていました。
けれどもミリダには、ヤロミールというなかよしの若者(わかもの)がいましたから、しあわせでした。
ある日のこと、主人の店に毛糸のきものをきた、まりのようにまん丸いおばあさんがきて、
「食べ物を、めぐんでくだされ」
と、たのみました
「こじきに食わせる物などない」
と、けちんぼうな主人は、おばあさんをおいだしました。
かわいそうに思ったミリダは、おばあさんにそっと、じぶんの一日ぶんのパンの耳をあげました。
するとおばあさんは、ニッコリわらっていいました。
「ミリダや、ありかとう。お礼にいくらつかってもへらない毛糸の玉と、魔法(まほう)のあみ棒(ぽう)をあげよう。これは、命令ひとつで一本のあみ棒(ぼう)が七本になって、一人でにあみはじめるのだよ。おまけにおまえが命令すれば、だれの手の中にでもとびこんで、あみものをさせるのさ。そしておまえがやめろというまで、クツ下をあみつづけて、じぶんのしたことを白状(はくじょう)してしまうのだよ」
ミリダはおおよろこびで、あみ棒(ぼう)と毛糸の玉をもらって、お礼をいおうとしたときには、もうおばあさんの姿(すがた)はきえていました。
夜になるのをまちかねて、ミリダは屋根うらのじぶんの部屋へもどると、あみ棒(ぼう)に、
「ネッカチーフと、手袋(てぶくろ)と、クツ下と、チョッキと、スカートをあんでちょうだい」
すると、どうでしょう。
あみ棒(ぼう)は一人でに動き出し、夜があけるまでには、なにもかもあみ上がっていました。
これでもう、ミリダはさむいおもいをすることもありません。
ミリダはまいばん、あみ棒(ぼう)にクツ下をあませ、近所のびんぼうな子どもたちにあげました。
さてあるとき、ミリダはたきぎをひろいに森へでかけると、とつぜん森のおくから強盗(ごうとう)のかしらがあらわれました。
ミリダのお父さんやお母さんを殺した、強盗(ごうとう)です。
強盗(ごうとう)は、ミリダに結婚(けっこん)を申し込(もうしこ)みました。
「おれとくらせば、きれいな着物も宝石(ほうせき)もやる。一日中あそんでくらせるぞ」
「とんでもない。だれがあなたの奥(おく)さんになるものですか!」
強盗(ごうとう)はミリダの言葉に、大笑いすると。
「気の強い娘(むすめ)だ。ますます気に入った。ひと月たったらむかえにいくからな」
と、いうと、いってしまいました。
一週間すぎ、二週間すぎ、たちまちひと月たちました。
すると、店の戸をあけて、強盗(ごうとう)のかしらがはいってきました。
かしらは、店の主人にいいました。
「おまえのところの女中を、花よめにもらいにきた」
主人はふるえながら、こたえました。
「ミリダさえ承知(しょうち)なら、よろこんで手ばなしましょう」
すると、ミリタがいいました。
「承知(しょうち)しました。でも、おねがいがあります。わたしの家の焼けあとに、三日間で新しい家をたててください。それから結婚式(けっこんしき)には、村じゅうの人をよんでください」
ミリダの結婚(けっこん)のことをしって、恋人(こいびと)のヤロミールはたいそう悲しみました。
けれどもミリダは、ヤロミールをなだめていいました。
「心配しないで。結婚(けっこん)のお祝いには、かならずきてちょうだいね。いい考えがあるのよ」
かしらのほうは、村じゅうのだいくをよびあつめ、やくそくした三日間で新しい家をたてました。
家具もすっかりそろえ、家畜小屋(かちくごや)にはウシやヤギをいれました。
家の前に、いくつもテーブルをならべ、ごちそうとお酒を山のように用意しました。
村じゅうの人が、結婚式(けっこんしき)によばれました。
ヤロミールもきました。
ミリダは花よめ衣装(いしょう)をきて、花むこのかしらとならびました。
まわりに六人の手下がすわりました。
かしらは、機嫌(きげん)よく、カラカラとわらっていいました。
「さあ花よめさん、お祝いだ」
そのときミリダは、魔法(まほう)の毛糸の玉とあみ棒(ぼう)をだして、早口でささやきました。
「あみ棒(ぼう)よ、七本におなり!」
あみ俸(ぽう)はキラキラ光りながら、音をたてて七本にふえました。
「強盗(ごうとう)たちの手にとびこんでクツ下をおあみ。手袋(てぶくろ)をおあみ!」
あみ棒(ぼう)はいっせいに強盗(ごうとう)たちの手にとびこんで、クツ下をあみはじめました。
強盗(ごうとう)がやめてほうりだそうとしても、あみ棒(ぼう)は手にすいついてはなれません。
ミリダは、つづけていいました。
「あみものをしながら、なにもかも白状(はくじょう)しておしまい!」
かしらと六人の強盗(ごうとう)たちは、ミリダの両親をころして家を焼きはらったこと、ヤロミールの財産(ざいさん)をうばったことなどを、ペラペラ話しだしました。
お客たちはあっけにとられて、あみものをしている強盗(ごうとう)たちをみつめました。
そのとき、毛糸の玉がくるくるとゆれて、中からあのおばあさんがあらわれました。
おばあさんは、あみものの妖精(ようせい)だったのです。
おばあさんがいいました。
「村の人たちよ。強盗(ごうとう)どもの白状(はくじょう)をよくきいたね。それでいかがかな、ミリダとヤロミールが結婚(けっこん)して、この家にすむというのは?」
「いいとも、いいとも!」
村の人たちは、声をそろえてさけびました。
さっそく、ミリダとヤロミールは結婚式(けっこんしき)をあげました。
そのあいだも強盗(ごうとう)たちは、あんで、あんで、あみつつげました。
おばあさんは、いいました。
「おまえたちは、おまえたちが悪いことをした人たち全員のクツ下をあみおわるまで、そのままだよ」
そして強盗(ごうとう)たちは、何日も何日もあみつづました。
そしてようやくあみおえたときには、悪いことをすることなどすっかりわすれて、腕(うで)の良いあみもの職人(しょくにん)として、村の人たちと平和にくらしました。
おしまい
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