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5月17日の世界の昔話
シカになった猟師
ギリシアの昔話 → 国情報
むかしむかし、アクタイオンという名前の若い猟師がいました。
ある夏の日のことです。
アクタイオンは十匹のイヌを連れて、森へシカ狩りに出かけました。
森の道を十匹のイヌたちは、シカをおってかけて行きます。
アクタイオンはイヌたちのあとについて、ほら穴の見える方へ走って行きました。
草をかきわけ、カーテンのような木のつるをよけて進んで行くと、ほら穴のむこうに泉が見えました。
泉から、何やら楽しそうな笑い声が聞こえて来ます。
アクタイオンは、木のかげからそっと様子を見て思わず、
「あっ!」
と、声を出してしまいました。
泉にいたのは美しい娘の姿の妖精(ようせい→詳細)で、月と狩りの女神のアルテミス(→詳細)のお供たちだったのです。
妖精たちは、アルテミスと水浴びを楽しんでいるところでした。
アクタイオンに気がっいた妖精たちは、あわててアルテミスをかくしました。
そしてアルテミスがアクタイオンをにらむと、
「無礼者(ぶれいもの)!」
と、さけびました。
そのとたん、アクタイオンのひたいからツノが生えました。
アクタイオンは、体中がメリメリと音をたてて変っていくことにおどろき、あわてて泉に姿をうつしました。
「ああ、なんということだ・・・」
アクタイオンは、なんとシカになっていたのです。
「どうしよう! ぼくはシカになってしまった! どうしたら人間に戻れるのだろう!」
シカになったアクタイオンはさけびながら、森の中をかけまわりました。
そのときです。
ワンワンワンワン!
アクタイオンのイヌたちが、シカになったアクタイオンを見つけて、目を光らせながら走って来るではありませんか。
「わあ、まて! 俺だ! お前たちの主人だ!」
アクタイオンは怒鳴りましたが、イヌたちにはシカの鳴き声にしか聞こえません。
そしてイヌたちは、主人のアクタイオンにかみつき、ついにはアクタイオンを殺してしまったのです。
冬の星座の小イヌ座は、このときのアクタイオンの猟犬の中の一匹の、メランボスというスパルタ犬であると言われています。
おしまい