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朗読者 虹の彼方

 むかしむかしの、ある夏の日のことです。
 お父さんもお母さんもいないネルロは、おじいさんと草むらですてイヌを見つけました。
 かわいそうに思ったネルロは、イヌを家へ連れて帰り、パトラッシュと名前をつけました。
 パトラッシュはすぐにネルロになつき、二人は兄弟のように仲良くなりました。
 ネルロとおじいさんは、村のお百姓(ひゃくしょう)さんから牛乳(ぎゅうにゅう)を集めて、十キロ先のアントワープという町まで売りに行く仕事をしていました。
 その仕事はとても大変な上に、あまりお金にはならず、ネルロとおじいさんはスープを一杯(いっぱい)飲むのがやっとという、とてもまずしいくらしです。
 ネルロが七歳(7さい)になったとき、おじいさんが病気になりました。
 ネルロとパトラッシュは、重い牛乳(ぎゅうにゅう)を乗せた荷車を引いて、アントワープまで行くようになりました。
 たいへんな道のりですが、ネルロはアントワープの町へ行くのが楽しみでした。
と、いうのも、アントワープの町にある大きな教会には、ルーベンスという有名な人の絵がかざってあるからです。
 でも残念(ざんねん)なことに、その絵にはいつも白い布がかかっていて、お金をはらわないと見ることはできません。
 しかしネルロは、ルーベンスの絵のそばにいられるだけで、うれしかったのです。
 ネルロは絵を見たりかいたりするのが大好きで、大人になったら絵かきになろうと心に決めていました。
 ネルロが十五歳(15さい)になったある日、かわいらしくてやさしい友だちのアロアを、ぜひ、えがきたいと思いました。
 アロアは、丘(おか)の上の風車(ふうしゃ)のあるお屋敷(やしき)に住む、お嬢(じょう)さんです。
 アロアのお父さんは、まずしい牛乳(ぎゅうにゅう)売りのネルロが、アロアと仲良しなのをいやがっており、なんとかして引きはなしたいと思っていました。
 ある日、ネルロがアロアの姿(すがた)をえがいてくれるというので、アロアはおしゃれをして出かけました。
 けれど、ネルロが持っていたのは、板きれと黒い木炭(もくたん)だけです。
「ネルロ、絵の具でえがくんじゃないの?」
 アロアはちょっぴりざんねんがりましたが、パトラッシュといっしょにえがいてもらった絵はとてもすてきで、アロアも大変気に入りました。
(よかった。アロアが気に入ってくれた。でも、こんどはちゃんとした絵の具でえがいてやりたいなあ)
 その日からネルロは、お昼ごはんのパンを買うのをがまんして、たまったお金で紙と絵の具を買いました。
 ネルロは、パトラッシュに言いました。
「パトラッシュ、ぼくはね、いつか人の心をつかむ、すばらしい絵かきになるんだ。そのときにはね、みんなに言うよ。『ぼくはパトラッシュに助けられて、絵かきになれました。一番大切な友だちはパトラッシュです』って」
 パトラッシュは、うれしそうにネルロを見あげました。
 ネルロは、一生懸命(いっしょうけんめい)スケッチをえがき始めました。
 クリスマスイブの子どもの絵の展覧会(てんらんかい)に、夕ぐれ時に切りかぶにすわって一休みするきこりのおじさんをえがいた絵を、出品(しゅっぴん)してみようときめました。
 その展覧会(てんらんかい)で一等になれば、二百フランという、ゆめのようなお金がもらえるのです。
 クリスマスイブの日、ネルロは心をこめてえがいた絵を荷車(にぐるま)につんで、パトラッシュといっしょにアントワープの展覧会(てんらんかい)の会場へ出かけました。
 ほかのみんなは、絵の上に上等な布をかけて、受付(うけつけ)にわたしています。
 でもネルロは絵には、ボロボロの布がかかっているので、ネルロははずかしそうに下を向きながら、受付の女性にそっと手わたしました。
「パトラッシュ、もし一等になったら、おなかいっぱい、あったかいスープをあげるからね」
 ネルロは雪のつもった町ヘ、パトラッシュと出ました。
 そのとき、だれがおとしものか、雪の中にお人形がおちていました。
 だれのかわかる日まで、アロアにあずかってもらおう。
 ネルロとパトラッシュは、アロアのお屋敷(やしき)へ行きました。
 そして、ネルロが展覧会(てんらんかい)に出品したことを話すと、
「ネルロは、きっと一等をとるわ!」
 アロアはそういって、お人形をあずかってくれました。
 けれどその夜、大変なことに、アロアのお屋敷(やしき)が火事になったのです。
「火をつけたのは、ネルロだろう!」
 アロアのお父さんは、きらいなネルロをうたがいました。
 そしてかなしいことは、まだつづきました。
 新しい牛乳屋(ぎゅうにゅうや)が、もう一人来るようになったので、ネルロの仕事がなくなったうえに、病気のおじいさんが死んでしまったのです。
 おじいさんのおとむらいのすんだ夜、家主(やぬし)がやって来て言いました。
「明日の朝、ここを出て行け!」
 朝が来ると、ネルロとパトラッシュは雪のふる外へ出ました。
 そして、アントワープの町へ、子どもの展覧会(てんらんかい)の一等の発表(はっぴょう)を見に行きました。
「パトラッシュ、一等を取って二百フランもらったら、ぼくたちの住む家をさがそうね。それから、まきを買って暖炉(だんろ)にくべて火をつけよう。そのあとは、おなかいっぱい食べようね」
 ネルロもパトラッシュも、このところ水しかのんでいなかったのです。
(必ず一等をとってみせる! 一等を取らないとダメなんだ!)
 でも、ネルロの夢は、すぐ消えてしまいました。
 一等をとったのはネロではなく、あまり上手ではないけれど、いろんな色の絵の具をたくさんつかってえがいた、海の絵だったのです。
 ネルロとパトラッシュは、展覧会(てんらんかい)の会場を、重い足どりで出ました。
「ああ、これからどうしたらいいのだろう? もしお金があったら。うん? どうしたの、パトラッシュ。・・・あっ!」
 なんとパトラッシュが、雪の中にうもれた財布(さいふ)をみつけたのです。
 ネルロがその財布をあけてみると、中には金貨がギッシリと入っていました。
 ネルロはまわりを見回しましたが、だれも見ている人はいません。
「これだけあれば、家をかりられるし、パンもたくさん買える。たくさんの絵の具も買うことが出来るぞ」
 ネルロはその財布を服の中にかくそうとしましたが、ふと、その財布に見覚えがあることに気づきました。
「これは、アロアのお父さんのお財布だ」
 ネルロは、アロアのお屋敷(やしき)へいそぎました。
 そして、アロアのお母さんに財布をわたすと、パトラッシュを家の中に押(お)しこんで言いました。
「この財布を見つけたのは、パトラッシュです。ごほうびに、何かうんとおいしいものを食べさせてやってください。そして、できたらここでかってやってください」
 ネルロはそう言い終わると、とびらをしめ、雪のふる夜の中へかけていきました。
「ああ、待って、ネルロ!」
 アロアとお母さんがネルロをおいかけましたが、ネルロの姿(すがた)はもう見えませんでした。
 雪の町でずっと財布をさがしてもどったお父さんは、アロアからネルロのことを聞くと、目に涙(なみだ)をうかべました。
「わしが悪かった、あんなにいい子をきらったりして」
 おなかがペコペコで、もう歩く元気もありませんが、ネルロは最後の力をふりしぼって、アントワープの教会のルーベンスの絵の前へ行き、床(ゆか)にすわりこみました。
 そのとき、肩(かた)にあたたかい息(いき)を感じてふりむきました。
「パトラッシュ! 追いかけてきたのかい」
 ネルロは、パトラッシュの首をだきしめました。
「ありがとう、パトラッシュ。ぼくたちは、ずっといっしょだね。ごめんよ、おいていったりして。パトラッシュ、もう、はなれるのはやめようね」
 すると、月あかりが教会にさしこみ、あたりが明るくなりました。
 雪がやんで、月がかがやきだしたのです。
「あっ!」
 ネルロは、思わずさけびました。
 ルーベンスの絵が、見えるのです。
 さっき、パトラッシュが暗やみの中で、布を引っかけて落としたからでした。
 ルーベンスの絵は、キリストの絵でした。
「パトラッシュ、ぼくはとうとう見たよ! ああ、なんてすばらしいんだろう!」
 ネルロはうれしくてうれしくて、涙(なみだ)をポロポロとこぼし、パトラッシュの首をあたたかくぬらしました。
「パトラッシュ、ぼくはもう疲(つか)れたよ。少し眠(ねむ)ってもいいかい?」
「ワン」
 ネルロとパトラッシュは、しっかりと抱(だ)きあったまま目を閉(と)じました。
 あくる朝。
 牧師(ぼくし)さまが、ネルロとパトラッシュを見つけました。
「もし、どうされました。こんなところでねていては、かぜをひきますよ。もし、・・・あっ!」
 ネルロとパトラッシュは抱(だ)きあったまま、冷たくなっており、二度と目を開くことはありませんでした。
 そこへ、アロアとお父さんとお母さん、それに三人の大人がかけ込(こ)んで来ました。
 アロアはネルロにかけよると、ワーッと泣き出しました。
「おとうさまが、ネルロのことをわかってくださったのよ。今日からいっしょにくらせるのに・・・。どうして、どうして天国へ行ってしまったの」
 三人の大人たちは、子どもの絵の展覧会(てんらんかい)で審査員(しんさいん)をした人たちでした。
 審査員(しんさいん)たちは、ネルロに涙(なみだ)を流してあやまります。
「気のどくなことをしてしまった。ネルロの絵は受付のときに、手ちがいで他の場所におかれていたんだ」
「とてもすばらしい、きこりの絵だったよ。われわれは、もう一度審査(しんさ)をやりなおしたんだ。そしてきみの絵が、一等にえらばれたんだよ」
 天国へめされたネルロとパトラッシュは、その言葉を聞いているかのように、やさしくほほ笑んでいました。

おしまい

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