福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話 > まさかの話
1月20日の日本の昔話
まさかの話
絕對無這種事情
・日本語 ・日本語&中国語 ・客家語 ・日本語&客家語
客家語 : 鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、吉四六(きっちょむ)さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
頭擺頭擺,有一個人安到吉四六,逐日過著盡樂線。
吉四六さんの村には、話しを聞くのが何よりも好きな、お金持ちのおじいさんがいました。
在吉四六先生戴个莊內有一個當好聽人講話又盡有錢个老阿伯。
人から色々と話しを聞くのですが、話しが面白くなると、
因為佢摎各種人講話也聽了盡多,若係聽到盡生趣个話時節
「まさか、そんな事はありゃんすめえ」と、必ず言うのです。
一定會講:「絕對無這種事情。」
だから、この頃は誰も相手にしてくれません。
所以這下無人愛摎佢講話。
「退屈だな。誰か話をしてくれんかな」
「無聊哪!有麽人愛摎𠊎講話無?」
おじいさんがそう思っていると、ちょうど吉四六さんが通りかかったので、おじいさんが話しをしてくれとせがみました。
老阿伯在該想个時節,堵好吉四六先生經過,老阿伯求吉四六摎佢講話。
「まあ、しても良いですが、話しの途中で、『まさか、そんな事はありゃんすめえ』と、言わない約束をしてくれますか?」
「做得啊!先講好,毋好在談話个半站仔講『絕對無這種事情。』做得無?」
吉四六さんが聞くと、「いいとも。もし言ったら、米を一俵(いっぴょう)やろう」と、おじいさんは約束しました。
吉四六聽到「好啦,假使講出來就愛罰一袋米。」後,就摎老阿伯約定。
「それでは、話しましょう」
「恁樣做得開始講咧。」
縁側に腰をかけると、吉四六さんが話し始めました。
在店亭下坐等,吉四六先生開始講:
「むかし、ある国の殿さまが立派なカゴに乗って、家来を連れて旅をしていた。
「頭擺頭擺有一個國个國主坐在盡派頭个轎頂,帶等管家出門去旅行,
殿さまのカゴが山道にさしかかると、どこからかトンビが一羽飛んで来て。
國主个轎行到山路个時節,毋知哪位飛來一隻扡婆,
『ピーヒョロロロロ』と、カゴの周りをグルグル舞い始めたのです」
『pi~hyororororo』叫,還在周圍捩捩轉,飛過來飛過去在該跳舞。」
「ふむ、なるほど」
「fumu,恁樣哪?」
「『何と良い鳴き声じゃ。どこで鳴いておるのじゃ』と、殿さまがカゴの戸を開けて体を乗り出すと、トンビが鳴きながら殿さまの羽織のそでに、『ポトン』と、フンを落とした」
「『麽个叫聲恁好聽,在哪位叫?』,國主打開窗門,探頭出來時節,扡婆飛兼來一片叫一片『噗』聲屙堆屎在國主短和服个衫袖頂。」
「ふーむ、なるほど」
「fu~mu,恁仰噢。」
おじいさんは米を一俵も取られては大変と、いつもの口ぐせを言わない様に気をつけています。
老阿伯拿出一袋米係盡難个事情,所以佢隨時注意無論哪量時都做毋得講出常透講个口頭禪。
「殿さまは家来に言いつけて、
『はよう、羽織の代わりを持ってまいれ』と、命じて、持って来た羽織に着替えた」
「國主吩咐管家講:『噯!拿領短和服分𠊎換!』,拿來後就換好了。」
「なるほど、なるほど」
「有影,有影」
「羽織を着替えてしばらく行くと、また先程のトンビが、
「短和服換好以後行一站仔,頭下該个扡婆
『ピーヒョロロロ』と、鳴いたので、殿さまがまたカゴの戸を開けて体を乗り出すと、今度はトンビのフンが殿さまの刀にポトン」
『pi~hyororororo』叫,國主又打開轎門,身体伸出去,這下扡婆个屎屙到國主个刀仔頂。」
「うーむ。まさか・・・」
「fu~mu,絕對...」
おじいさんは言いかけて、危なく思い止まりました。
老阿伯開嘴講又煞煞停下來還險哦!
「殿さまは家来に言いつけて、刀の代わりのを持って来させた。
「國主吩咐管家去拿過支刀仔來換,
しばらく行くと、またまたさっきのトンビが、
『ピーヒョロロロ』と、鳴いたんだ。
過一下仔,頭下該隻扡婆『pi~hyororororo』叫,
殿さまがカゴの戸を開けて、またまた体を乗り出すと、今度はトンビのフンが殿さまの頭にポトン。
國主又打開轎門,身体伸出去,這下扡婆个屎屙到國主个頭那頂,
すると殿さまは、
『はよう、首の代わりを持ってまいれ』と、家来に命じて、自分の刀で首をチョンと切ってな。
國主命令管家『噯!去拿个頭林來分𠊎換』,用自家个刀仔摎自家个頭林刴下來,
家来の持って来た代わりの首とすげ代えて、そのまま何事もなく旅を続けたそうじゃ」
管家拿來分佢換个頭林裝上去,繼續去旅行。」
おじいさんは、思わず、
「まさか、そんな事はありゃんすめえ!」と、大声で言ってしまいました。
老阿伯不知不覺大聲講「絕對無這種事情!」
「へい。米を一俵ありがとうございます」
「hei!承蒙你个一袋米來。」
こうして吉四六さんは、おじいさんから約束の米をもらうと、さっさと帰って行きました。
斯恁樣,吉四六先生在老阿伯該贏著約定个一袋米,遽遽轉去。
おしまい
煞咧
註: きっちょむさん(→漢字では吉四六)は、大分県大野郡野津町に実在した人物で、酒造業をいとなんでいた初代広田吉右衛門であるとされています。
吉四六先生;實際有這个人,戴在大分県大野郡野津町,經營酒類製造个第一代廣田吉右門。
その位牌や墓ものこっているとされていますが、彼がきっちょむさんかどうか、確かな証拠はありません。
這下還看得著碑石、牌位等遺跡,但係,係毋係吉四六先生本人个,並無確實个証據。
昔話を代表するおどけ者のひとりで、とんちをはたらかせたり、ずるがしこくふるまったり、また逆に、おろかな人間としての一面もあります。
傳說故事肚代表古琢个人物,盡即靈又非常狡猾个人、或者憨憨个人。
きっちょむさんのお話は多く、その数は二百話以上もあるとされていますが、その大半は近年の創作だといわれています。
吉四六先生个故事當多,有二百條以上,毋過一半以上係這幾年創作。
|