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3月4日の日本の昔話
生あるものは
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投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
【必ず眠れる日本の昔話集6】睡眠導入・作業用 元NHKフリーアナ(大人が眠れる読み聞かせ)
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投稿者 「読み子(よみこ)」 読み子の朗読劇場
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制作 : 眠れない夜の、眠れるお話
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投稿者 「眠りのねこカフェ」
日本語&客家語
むかしむかし、ある寺に、和尚(おしょう)さんと小僧が住んでいました。
この寺の和尚さんは、柿が大好きです。
そこで秋になると、和尚さんは寺の柿の実を全部一人で食べてしまうのでした。
さて、秋も終りに近いある日の事。
一人で寺の留守番をしていた小僧は、柿の木に真っ赤な柿の実が二つだけぶら下がっているのを見つけました。
「ああ、何とうまそうな柿の実だろう。・・・せめて一つだけでも、食べてみたいな」
そんな事を考えた小僧は、とうとう我慢出来ずに木に登り、柿の実を一つ食べてしまいました。
「うあ、甘くてうまい!」
あまりのおいしさに、小僧は二つとも食べてしまいました。
ところが、ふと我に返った小僧は大あわてです。
「しまった! このままでは和尚さんに叱られる!」
小僧は何とかして、和尚さんに怒らせない方法はないかと考えました。
そしてあれこれ考えながら寺の中を歩いていたので、うっかりと和尚さんが大事にしていた茶碗を蹴って割ってしまいました。
「大変だ! 柿ならまだしも大切な茶碗まで! このままでは和尚さんに殺されてしまう! ・・・うん? ・・・殺される。・・・壊れる。・・・・・・そうだ!」
さて、夕方になると和尚さんが帰って来ました。
小僧は和尚さんを出迎えると、和尚さんに尋ねました。
「和尚さま。実は和尚さまの留守中に、旅のお坊さまが来られまして、私に問答(もんどう→知識をきそい合う修行)をされました。
お坊さまに、
『生あるものは・・・』と、聞かれましたが、私には答える事が出来ませんでした」
それを聞いた和尚さんは、ニッコリ笑って言いました。
「そうか、そうか、今度その様に問われる事があれば、
『必ず滅(めっ)す』
と、答えるのじゃ。
生あるものは、必ず滅す。
そして形がある物は、必ず壊れるもの。
それは、仕方のない事じゃ」
「仕方のない事で、ございますか?」
「そうじゃ。世の中には、それが分からぬ未熟者が大勢おるがな」
和尚さんがそう言ったとたん、小僧は割れた茶碗を目の前に差し出しました。
「和尚さま、お許し下さい。和尚さまの好物の柿を食べた上、大切な茶碗を割ってしまいました」
「なんと・・・」
和尚さんも怒るに怒れず、苦笑いをして小僧を許してやりました。
おしまい
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