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10月8日の日本の昔話

吉四六さんの水風呂

吉四六さんの水風呂
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読

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投稿者 「きべだよ。

♪音声配信(html5)
音声 スタヂオせんむ

♪音声配信(html5)
音声 ヤマネコギン

 むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 ある時、吉四六さんは大勢の百姓たちと一緒に米を馬に積んで、年貢を納める為に役人の所へ向かいました。
 この日はとても暑い日だったので、みんなへとへとです。
 特に馬は重い米だわらをつけているので、可哀想なほど苦しそうです。
 でももう少し行くと、小さな泉があります。
 あまり水が良くないので人は飲めませんが、馬なら大丈夫です。
「もう少しだ、我慢しろよ」
 みんなはそれぞれ自分の馬をいたわりながら、山道を進みました。
 そしてやっとの事で、その泉に到着したのです。
「さあ、飲みな」
 先頭の百姓が、馬を泉のそばに引き寄せましたが、
「あっ! ・・・なんて事だ!」
 長い日照り続きだった為に泉の水が減って、もう少しの所で馬の口が水に届かないのです。
「おい、誰かおけを持っていないか?」
「・・・・・・」
 しかし誰も、そんな用意はしていません。
 百姓たちは代わる代わる自分の馬で試してみましたが、どの馬ももう少しのところで届きません。
「やれやれ、これは弱った」
「このまま水も飲ませずに無理をすれば、馬が倒れてしまうぞ」
 みんなが困っていると、吉四六さんが言いました。
「おいみんな、ちょっと待ってろ。おれがうまく馬に水を飲ませてやるから」
 そして吉四六さんは着物を脱いで、裸になりました。
「吉四六さん、もしかして掘るつもりか? いくら掘っても、これ以上は水はわかないよ」
 みんなはそう言って笑いましたが、でも吉四六さんは構わずに泉の中に飛び込んで首までつかると、向う側に身を寄せました。
「うひゃーーっ、ちょっと冷たいが、こりゃいい気持ちだ。さあ、これで水かさが増したぞ。もう何人かが手伝ってくれりゃあ、馬の口が届くはずだ」
 それを聞いたみんなは、ようやく吉四六さんの考えがわかりました。
「なるほど! 掘るんじゃなくて、飛び込んで水かさを増したのか。これは名案、さすがは吉四六さんだ。よし、わしらも手伝うぞ」
 ほかの百姓さんたちも裸になって泉に飛び込んだお陰で、馬は無事に泉の水飲む事が出来たのです。

おしまい

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