福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 11月の日本昔話 > えんまになった、権十おじいさん
11月2日の日本の昔話
えんまになった、権十おじいさん
變做閻王个權十老阿伯
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、芝居(しばい)がさかんな村がありました。
頭擺頭擺,有一隻村莊當興戲劇。
少しでも時間があると、大人も子どももみんな芝居の練習をしています。
一下有閒,大人細子全部去學做戲。
ある年の事、この村で一番芝居の上手な権十(ごんじゅう)おじいさんが、ポックリと死んでしまいました。
某年,該村一等會做戲个權十老阿伯,忽然間死忒。
おじいさんはあの世へつながる暗い道を一人ぼっちでトボトボと歩いていると、むこうから金ぴかの服を着たえんま大王がのっしのっしとやって来ました。
老阿伯在通往另外一隻世界、暗疏疏个路項,一儕人無氣無脈在該行時節,對面一個著等金晶𥍉亮个閻王,腳步沉重行過來。
「こら、そこの亡者(もうじゃ→死んだ人)」
「噯,該個亡者。」
「へえ」
「hee。」
「へえではない。返事は『はい』ともうせ。それに何じゃ、お前のすわりようは」
「應hee做毋得,愛應『hai』,另外,你仰會恁樣坐。」
「へえ。その、腰がぬけましたので」
「hee,因為腰骨痛。」
「ふん、だらしない。・・・ところでお前、確かしゃば(→人間の住む世界)では、芝居をやっておったそうだな」
「fun,恁儘採,・・・毋過,你確實在世間,聽講做過戲。」
「へえ、よくご存じで。しかしわたしのは芝居ともうしても、にわか芝居(→しろうとの芝居)でして」
「hee,你盡了解,雖然講係𠊎會做戲,毋過係業餘个。」
「そうか。そのにわか芝居とやらでかまわんから、ここでやってみせろ」
「係無?該業餘个乜無相干,這位做分𠊎看!」
「あの、えんまさまは、芝居がお好きでございますか?」
「無該,閻王大人,你好看戲係無?」
「いや、見た事がない。しかし、しゃばの者は芝居を見て楽しんでおると聞く。そこで、芝居をしておったお前が来ると聞いて、わざわざここまで来たのじゃ。さあ、芝居とはどのようなものか、やってみい」
「毋係,毋識看過,毋過,聽講世間人看戲看到當歡喜,所以聽講你做過戲愛來這位,專工來這,戲劇係麼个樣个東西,做來試看。」
「へえ、やってみいとおっしゃいましても、わしはこの通りの亡者でして、衣装も何もございません」
「hee,雖然你講做來試看,𠊎係這路上个亡者,連戲服、其他麼个都無。」
「衣装がなくては、芝居が出来ぬのか?」
「無戲服,無法度做戲嘎?」
「へえ、出来ませぬ。もし、あなたさまが衣装を貸してくだされば、地獄(じごく)の芝居をやってごらんにいれますが」
「係,無法度,若係,你个衫褲借分𠊎,就做地獄戲劇分你欣賞。」
そこでえんま大王は、自分の衣装をぬいで貸してやりました。
過後,閻王大人就摎自家个衫褲脫下來借佢。
こうして、えんま大王がおじいさんの衣装を着て亡者となり、おじいさんがえんま大王の衣装を着てえんま大王になりました。
恁樣,閻王大人就著亡者个衫褲,老阿伯就著閻王大人个衫褲做閻王。
「では、芝居をはじめろ」
「該,好開始上棚了!」
「へえ。さっそく、はじめましょう」
「係,黏時開始。」
おじいさんはすっかり元気になって、すっくと立ちあがりました。
老阿伯精神黏時來了,企起來。
「まずは、えんまのおどりでござい」
「首先係閻王舞。」
おじいさんがえんま大王の服を着ておどっていると、そこへ赤鬼と青鬼がやって来ました。
老阿伯著等閻王个衫褲跳舞時節,一大堆紅鬼摎青鬼走過來。
「もし、えんま大王さま」
「噯,閻王大人。」
鬼たちはおじいさんの前に両手をついて、ペコペコ頭を下げました。
該兜鬼在老阿伯面頭前兩支手撐等,頭頷尾鑿。
「えんま大王さま。そろそろ、お戻りくだされ」
「閻王大人,好轉來去了。」
「ただいま亡者どもが団体でまいりまして、地獄は大忙しでござります」
「這下亡者弛崗打陣來,地獄無閒直掣。」
その時、亡者の衣装を着たえんま大王が、あわてて言いました。
該下,著等亡者衫褲个閻王大人,慌慌張張講︰
「このたわけめ!えんま大王は、このおれだぞ」
「這兜𤘅奓牯,閻王大人係𠊎正著。」
すると赤鬼と青鬼が、えんま大王をにらみつけました。
紅鬼摎青鬼䁯閻王大人。
「こらっ!亡者のくせに何をぬかす。お前は、はよう地獄へまいれ」
「噯!亡者你講麼个東西,你遽兜落地獄。」
「いや、だから、おれがえんまだ。おれが、本物の大王だ」
「毋著,因為𠊎係閻王,𠊎,閻王本尊。」
「無礼者!」
「無禮貌个人!」
赤鬼は持っていた金棒で本物のえんま大王をバシッバシッと打ちのめして、地獄へ引きずって行きました。
紅鬼用擎等个金棍仔,摎閻王打橫,拖去地獄。
「さあ、えんま大王さま、お急ぎください」
「閻王大人,請較遽兜。」
こうしてえんま大王の服を着た権十おじいさんは青鬼に連れて行かれ、そのまま本当のえんま大王になったという事です。
斯恁樣,著等閻王衫褲个權十,聽講分青鬼渡等去,變做正經个閻王。
註: 「ももたろう」や「いっすんぼうし」など、昔話の名脇役の鬼は、想像上の怪物で、餓鬼、地獄の青鬼・赤鬼があり、美男・美女に化け、音楽・双六・詩歌などにすぐれたものとして人間世界に現れます。
註︰「桃太郎」抑係「地矮仔」民間故事裡肚配角个鬼,係想像个怪物,有枵鬼、地獄个青鬼・紅鬼、化做美男・美女、音楽・双六・詩歌等等全通,在世間出現。
後に陰陽道の影響で、人身に、牛の角や虎の牙を持ち、裸で虎の皮のふんどしをしめ、怪力の持ち主としてえがかれています。
後來受陰陽道个影響,描寫人身頂背生牛角、虎牙,完身無著衫褲斯著一條虎皮做个纏腰布,盡大力。
昔話では、えんまの子分としても登場します。
民間故事裡肚,以閻王徒子徒孫身份出現。
たいていは悪い存在ですが、「岩になった鬼」など、人間のために自分を犠牲にする鬼もいます。
大體係壞人,毋過像「變岩石个鬼」,為人類自我犧牲个鬼乜有。
おしまい
煞咧
|