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9月8日の小話
ととの目
むかし、三太(さんた)という、バカな息子がいました。
ある日の事、親父の留守に、人がたずねて来ました。
バカ息子の三太は、げんかんに出ると言いました。
「とと(→父親の事)は、ただいま留守でございます。お前さまは知らぬお人だから、家にあげるわけにはいきませぬ」
「そうかそうか。うわさと違って、良くできたかしこい子だ。しかし、かしこい三太さんとは知り合いではないが、親父さまとは知り合いなんだ。親父さまが見ればすぐにわたしがわかるから、しばらく待たせてもらうよ」
「とと(父親)の目で見ると?」
三太はしばらく考えていましたが、すーっと奥に引っ込むと父親のめがねをかけて出てきました。
そして、客の顔をじっと見てから言いました。
「ととの目で見ても、やっぱりお前さまは、知らぬお人だ」
おしまい
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