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9月13日の小話
ろうそく
ろうそくを見たこともない田舎の家に、江戸の親類(しんるい)からろうそくが一箱届きました。
「これは、何だろう?」
家の者が集まって考えましたが、さっぱりわかりません。
村人たちにも見てもらいましたが、
「さあ、何だろうな?」
と、言うばかりです。
するとその中の一人が言いました。
「これはひょっとして、食い物ではないのか?」
「なるほど、確かにモチのような色だ」
そこで試しに一口食べてみると、とてもやわらかです。
「なんだ、食べ物か」
みんなは安心して、パクパクと食べ始めました。
するとそこへ庄屋さんが通りかかり、ろうそくを食べているのを見てびっくり。
「バカな事を! これはこの前に大阪へ行った時に見たが、頭のてっぺんから火を出して燃える物だぞ! そんな物を食っては、腹の中が火事になるぞ。食った者は全員、池に入れ、入れ」
庄屋さんはそう言ってろうそくを食べた者たちを池に入れると、家から持ってきたひょうし木を打ち鳴らしながら、池のまわりをぐるぐるまわりました。
「火の用心、火の用心」
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
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