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5月8日の日本民話 2
蛇の天上のぼり
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むかしむかし、大きな大きなカキの木があり、カキの実がすずなりになっていました。
村人たちは、ここを通るたびに見上げては、
「もうそろそろ、カキの実が落ちてくる頃だ。雨でも降れば、すぐに落ちるぞ」
と、言っていました。
ある日、急にあらしになって、大粒の雨がバラバラと降って来ました。
村人たちはカキの実をひろおうと、カキの木のところへ行ってみました。
ところが鈴なりになっているカキが、一つも落ちていないのです。
「おや? あれだけ雨が降ったのに、どうして一つも落ちないのだ?」
村人たちが不思議に思ってカキの木を見上げると、何と大きな大蛇(だいじゃ)がすずなりになっていたカキの実を、一つまた一つと食べていたのです。
やがて大蛇は全てのカキの実を食べてしまうと、そのまま天へとのぼりはじめました。
さすがの大蛇もカキを食いすぎたのか、お腹をゴロゴロならしています。
しばらくして大蛇の姿が見えなくなると、ふたたび大粒の雨が降って来ました。
しかしその雨からは、カキの甘いにおいがします。
「ややっ、この雨は、天にのぼった大蛇のおしっこだ!」
村人たちはあわてて、逃げていきました。
おしまい
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