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6月1日の日本民話 2
モグラと馬と人間の罪
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制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
むかしむかし、人間と馬とモグラは、神さまの住む天国に住んでいました。
ある日の事、人間と馬が食べ物がなくて困っている話をしていると、そこへモグラがやって来て言いました。
「なあ、知っているか? 何でも神さまの家の蔵には、食べ物が山ほど詰まっているそうだ」
するとそれを聞いた馬が、モグラに言いました。
「ああ、おれも聞いた事がある。しかし、それなら神さまも、おれたちに食べ物を分けてくれてもいいのにな」
「ふん! あのケチな神さまがくれるわけないだろう。それよりも、おれたちでその食べ物を盗みに行かないか?」
それを聞いた人間が、びっくりして言いました。
「何て恐れ多い事を。そんな事をして、罰が当たったらどうする」
するとモグラは、人間の言葉を鼻で笑いました。
「ははーん。お前は臆病だな。なーに、うまくやれば見つかりっこないさ。なあ馬よ、お前はおれと一緒に行くだろう?」
「ああ、もちろんだ」
こうしてモグラと馬は、神さまの家へと忍び込んだのです。
そしてモグラが地面に穴を掘って蔵の床下に穴を開けると、そこから食べ物を運び出しました。
それを馬が背中に乗せて、二人は急いで逃げたのです。
さて、それから数日後、蔵の見回りに来た神さまは、蔵から食べ物が盗まれているのに気づきました。
そして神さまは、人間と馬とモグラを自分の家に呼びつけて言いました。
「お前たちが、今回の盗みに関わっているのは調べがついている。よって、これからお前たちに罰を与えることにする」
神さまはそう言うと、まず人間に言いました。
「お前は、今回の盗みには参加しておらんな。だが、お前はモグラと馬が盗みをするのを知りながら、それをわしに知らせず黙っていたな。それは、お前が食べ物を作る苦労を知らんからだ。よってお前は地上へ行き、これからは自分で食べ物を作って暮らせ」
次に神さまは、馬に向って言いました。
「お前は、直接には食べ物を盗んではおらんが、盗んだ食べ物をかついで逃げたのは、食べ物を盗んだ事と同じだ。よってお前は、これからは一生の間、人間に使われて荷を運ぶがよい」
そして最後に、神さまはモグラに言いました。
「人間も馬も悪かったが、直接食べ物を盗んだお前が一番悪い。よってお前には一番きびしい罰を与える。お前は今後、暗い地面の中で暮らすがよい」
こうして人間は自分の力で作物を作ることになり、馬は人間に使われて荷物を運ぶようになり、そしてモグラは、一生を地面の中で暮らすようになったのです。
おしまい
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