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6月3日の日本民話 2
金つぼ
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むかしむかし、あるところに、とても働き者ですが、あわて者で損ばかりしている木こりがいました。
ある日の事、仕事をすませた木こりが家に帰ろうとすると、帰り道の途中に大きなつぼが落ちていました。
(はて? こんなところに、どうしてつぼがあるのだろう?)
木こりは不思議に思って、つぼを棒で突いてみました。
すると突然、つぼがパカリと二つに割れて、中から黒い煙がもくもくと立ち登ったのです。
「わあっ! 何だ! 何だ!」
びっくりした木こりが逃げ出そうとすると、煙の中からまっ白なひげを生やしたおじいさんが現れて言いました。
「これこれ、逃げるな。
ちょっと待て。
よしよし、怖がる事はないぞ。
わしは、この山の神さまじゃ。
お前が毎日まじめに働いているから、褒美にこの金つぼをやろうと思ってな」
「金つぼ?」
「そうだ。この金つぼはな、中に水を入れると金が欲しいだけわいて出る、不思議なつぼなんじゃ」
「それは大した物だが、しかし割れたつぼでは水を入れられんぞ」
「心配するな」
おじいさんはそう言うと、すーっと煙になって消えてしまいました。
そしてふと見ると、二つに割れたはずのつぼが、きれいに直っているのです。
「不思議な事じゃ。
しかし、あまりにも話がうますぎるな。
これはもしかすると、キツネのいたずらかもしれないぞ」
そう思って木こりがあたりを見回してみると、木の間からこっちを見ているキツネがいたのです。
「それやっぱり、お前の仕業だな!」
するとキツネは、慌てて首を横に振りました。
「とんでもない。わたしは、ただ通りかかっただけです」
「ふん。だまされるものか!」
木こりは、つぼを持ち上げると、谷川につぼを投げ込んだのです。
「あー! なんともったいない。せっかく山の神さまがくださった金つぼを・・・」
キツネはびっくりした様に、谷川をのぞき込みました。
「ふん。どうせあの神さまもつぼも、お前の仲間が化けていたのだろう。さあ、早く行って助けてやれ」
そう言って木こりは谷川を見たとたん、目を丸くしました。
何と谷川に落ちたつぼの中に水が流れ込み、中からざくざくと小判があふれ出ているではありませんか。
「しまった! さっきの話は本当だったのか!」
木こりは慌てて谷川に降りる道を探しましたが、まわりは全て切り立った崖なので降りる事が出来ません。
「何て事だ」
そうこうしている間に、金つぼは流れに流されてどこかへ行ってしまいました。
キツネが、残念そうに言いました。
「まったく、おしいことです」
「・・・・・・」
木こりは言葉も出ず、がっかりして家に帰りました。
おしまい
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